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 出発は翌朝だった。

 おみやげに数日前和磨とアモンが一緒に焼いた焼き菓子を持ち、いつもメフィストに持たせているという弁当をアモンに持たされ、明日の着替えと寝着のつまった袋をカイムに渡され、ルーファウスに組紐のリボンで髪を結われ。

 たった一泊の小旅行にしては送り出す人々の思いも手に持つ荷物も大げさなほどだった。
 改めて、それだけ大事にされている実感が湧く。

 心尽くしの見送りに、メフィストも責任をひしひしと感じたようだ。

「丸一日、大切にお預かりいたします」

 普通なら夜にだけ開く門を抜けるところだが、最上位にも迫る魔力を自在に扱うメフィストは直接自宅からこの城まで移動できる。
 その魔力を自負しているからこそ、魔王の掌中の珠である和磨を守ると約束できるのだろう。
 反対に、メフィストで歯が立たないならばアスタロトでもベルゼブブでも結果は同じだという現実がそこにはある。

 掴まるように指示されて、和磨はするりとその腕をメフィストの腕に絡め寄り添って、ルーファウスを振り返った。

「行って来ます」

 それはもちろん帰る事が前提の挨拶で、ルーファウスはようやく安心したように微笑んで頷き返す。

「楽しんでおいで」

「うん」

 まるで家族のような互いの信頼感を実感できる会話を交わす。

 和磨が頷くのを待って、メフィストは転移の術を発動した。





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