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 ここ、県立開政高等学校は、さっきから散々言っているとおり、男子校である。公立としては県下ナンバーワンの進学校で、最寄駅まで歩いて一分という近さの、交通の便はかなりいい高校だった。
 駅の名前に開政高校前とつかなかったのが不思議なくらい、この辺りでは有名な学校で、正門前の初代校長の胸像前は、近所の人の格好の待ち合わせスポットとなっている。学区を問わず勉学意欲のある男子生徒を幅広く受け入れているため、通えない人のために敷地内に寮まで完備している。

 この学校の特殊なところといえば、学問だけでなくスポーツも奨励しているところだろう。スポーツ特待制度はないが、それでも各部揃って優秀な成績を収めている。文武両道とはよく言ったものだ。
 例をあげると、まず野球部は毎年県ベスト八に入る実力だし、サッカー部は昨年の夏ベスト八入りを果たした。柔道部には団体準優勝のトロフィーが三つならべられている。剣道部は昨年夏の大会で県大会優勝を果たした。バスケットボール部もバレーボール部もハンドボール部も卓球部もバドミントン部も陸上部も水泳部もそれぞれ好成績を残している。
 文化部には目立った成績は残っていないが、メディア研究部の活動は高校クラスにしては本格的で、大変珍しいとテレビ番組で取り上げられたことがある。
 これで県内東大輩出最多校なのだから、有名にもなろうというものだ。

 一学期最初の金曜日。今年度最初の授業が行なわれた。
 二年生にもなると、芸術選択のうえに理科選択が加わり、クラス分けがより大変なものとなる。さらに成績順に割り振っているから、成績上位者たちはどうしても複合クラスになってしまうのが常である。この学年は、ただの複合ではなく全種類複合のクラスとなってしまった。何年かぶりなのだそうだ。
 芸術が音楽美術書道の三科目。理科が物理化学生物地学の四学科。あわせて十二通りの選択パターン全部が重なってしまったわけである。他のクラスとの授業時間の兼ね合いもつかず、芸術と理科だけは少人数授業とならざるをえなくなった。

 そんなわけで時間割り制作も大変だったこのクラスの一番目の授業は、日本史だった。最初から別クラスに別れるということだけは免れたようである。

 この県には、学期に一度、県下一斉テストというものがある。これによって、県の教育委員会はそれぞれの学校の学力レベルをはかっているのだそうだ。
 ちなみに、この学校の平均点は、全科目全学年通じて八十点以上。したがって、このテストのために黙々と勉強するような愚か者はまずいない。その日の朝でさえ、誰も机に向かって何かしているという人はいなかった。来週月曜日に控えているにもかかわらず、ほらこの通り、である。
 中間テストや期末テストでもこんな感じであるのは否めないが。何しろ、予備校のレベルの方がより高いので、学校の授業で悪い成績を取る人などまずいないのである。





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