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 四人の今日の服装は、さすが主役らしく、それぞれに華やかだ。友也は純白のウエディングドレス。その入り婿の雅は薄いグレーのタキシード。一方の高井夫妻は、哲夫が白のタキシードで、宏春は雅のグレーに少しパープルを混ぜた微妙な色のタキシード。全員が微妙に違う格好をしてみせるところが、四人の仲の良さを象徴している。うまく相談して決められているから、かぶる事がないのだ。

 それにしても、三十も半ばに近い男が、ウエディングドレスに違和感がないというのは、どうなのだろう。さすがに試着時に本人以外の三人が揃って首をひねっていた。

「で? 新婚旅行はどこへ?」

 やけに似合うウエディングドレス姿の後輩に目の保養をたっぷりとって、長谷は興味津々に尋ねてくる。傍で聞いていたらしく、長谷の友人の林が首を突っ込んできた。今やとある雑誌出版社の編集長を務める若き実力派ジャーナリストだ。

「ハネムーンも四人一緒なの?」

「いいえ、さすがに別ですよ。俺たちは、箱根で一泊二日の温泉三昧」

「俺たちは、一週間北海道の旅です」

 ちなみに、当初は四人で計画を立て始めたものの、普通の会社員である哲夫がそんなに休みを取れず、仕方なく二手に分かれた経緯があるので、からかいも半分は大当たりだ。

 それだけ、四人は実に仲が良い。

 仲が良い、といえば、林も確か高校生当時、仲の良い恋人がいたはずだが。

「御手洗先輩とは、どうなっちゃったんです? 今日は来ていただけなかったんですけど」

「あぁ、御手洗? 今、アメリカにいるよ。向こうで結婚してね、今二児のパパだって」

「えぇっ!? 御手洗先輩がぁ?」

 世の中不思議なことも起こるものだ。御手洗といえば、友也に負けず劣らず女性っぽい容姿を持っていた美人である。隣に女を置いたらレズに見える、とまで言われた人で、きっと当時の恋人である林と一生添い遂げることだろうと噂になったほどだった。それが、普通に女性と結婚して子供まで儲けているとは。

 驚いている後輩四人組に、林はくっくっと笑った。彼の中ではすでに消化済みなのだろう。かつての恋人をこうして笑い話に出来るのだから。

 そう考えると、確かにあれから十五年以上の月日が流れているわけで、当然のことなのかもしれない。

「お前らみたいに、まだ続いてる方がすごいんだよ。ずっと一緒で飽きないか?」

「全然」

「すでに空気だし」

「そばにいないと息も出来ないし」

「うわ、言い切りやがった」

 呆れたように声を上げながら、林はけらけらと笑う。

 四人揃っての知り合いで、これだけからかってくれる相手は、この二人だけで、これだけの行事を立ち上げておきながらさすがに緊張していた彼らの緊張が、自然とほぐれた。本当に、ありがたい先輩だと思う。

「ま、末永く、お幸せに、ってことで」

「先輩たちも。イイ人早く見つけて、結婚式に呼んで下さいよ」

「そうだなぁ。手っ取り早く、俺ら二人でやっちまうか?」

「冗談でも、林はイヤ」

「ひでぇ。名指しで嫌がるか」

 ひどい、と言いながらも、ショックを受けた様子もなく、林は実に楽しそうに笑っている。長谷もまた、ニヒルな笑みを浮かべて、かつての友人と後輩たちを面白そうに眺めていた。

 何だか、あの頃から変わらない二人が、今の緊張状態の四人には、頼もしくてならなかった。




 その後は、招いた客人の全てに挨拶して回り、家族のもとへ戻ったところで、宏春と哲夫は両家の母親に、友也と雅は長峰家の祖父に、それぞれ捕まってしまい、それぞれに自慢話の肴にされ、パーティは大盛況のうちに幕を閉じた。





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