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 今回の新聞、一面でいきなり新しい『太陽の女神』発表をしていた。先週の金曜日宣言したとおり、これ以上のネタはないから。雅にそれを見せたら、あんぐりと口を開けたまま固まってしまった。さすがにこれは驚いたか。

「うそ?」

「新聞に嘘書いてどうするよ。文句なし。全校生徒の過半数の支持があって、めでたく決定。取り消し効かないからよろしく」

 腰に手を当て踏ん反り返って、宏春は偉そうにそう言った。俺を『氷の女神』にしたときと同じように。懐かしくて、つい笑ってしまった。哲夫も知らなかった大ニュースらしく、新聞を見て、へえ、と言っている。

「こうなってくると、史上初、二人の女神が恋人同士、ってこともありうるわけだ。何か、傍観者としては俺ってお得な立場じゃない?」

「それは……。友也の気持ち次第だから何とも言えないけど」

 あれ? あっさり受け入れてる。雅って、どうしてこう順応早いんだ? ついさっき驚いたばかりなのに。

「あっさりしてるなあ、雅。女神様になる感想とか、ないのか?」

「んー? 感想ねぇ。俺は、友也を幸せにしてあげられればそれでいいから……。その意味でいくと、自分の立場も固めておきたいし、ありがたいところだけど。どうでもいいかな、正直な話」

 まわりはどうだろうと自分は自分、らしい。まわりにちゃんと合わせられて、それでも引きずられずに自分という存在をしっかり確立している。そういう人間だ、雅という人間は。

 雅の返事に、宏春と哲夫は顔を見合わせて笑いだした。ばしばしと哲夫が俺の背を叩く。何でもいいが、痛い。

「お前、すごい良い奴に惚れられたなあ。この幸せ者っ」

「こんな風に言ってくれる奴なんてそういないぞ、友也。意地張ってないで恋人になっちまえよ。魚は逃がすものほどでかいぞ」

 まったく、宏春も哲夫も、無責任に勝手なことばっかり言うんだから。なんて思って、笑いだす。本当に恋人になれたらいいけど。
 でも、まだ無理だから。もうちょっとだけ待って。せめて、雅の気持ちを利用しなくて済むようになるまで。素直に、好きだから、と言えるまで。

「その前に、俺が雅にふさわしい人間にならなくちゃね」

「友也はそのままで良いの」

「これ以上魅力的になったら、雅が困るじゃないか。恋敵が多くて」

 なあ、と哲夫が宏春に意見を求める。くすくすと宏春が笑った。

「人間、ちょっとくらい欠陥があったほうが可愛げがあっていいと思うぞ」

「俺の欠陥部分はちょっとどころじゃないって」

 そんなことはない、と三人揃って首を振る。それが揃ってしまったことに受けて、顔を見合わせて笑いだした。

 身内の意見って、どうしてこう過大評価になるんだろうな。





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