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 全裸になった志之武は、確かに全身が幼児化していて、どこもかしこも小さくなっていた。元々体毛は薄いほうなのだが、子供であるだけに、脇や下腹部にも毛がなく、全身がつるんとした素肌を露出している。
 見慣れているからどうということもないが、それでも子供の肌はそれだけで何故か情欲をそそった。それはもちろん、相手が志之武だからなのだが。

 小さな手で、それでも征士の全身を洗った達成感からか、湯船に浸かった志之武はなんだか幸せそうに笑って、一緒に入っている征士にしがみつく。
 座ると溺れるし、立っていると肩まで入れない、微妙な高さなので、今は征士の膝の上に抱かれていた。

「なぁ、しのさん」

「ん〜? なぁに?」

 小さな志之武を腕に抱いて、どうやら何か考え事をしていたらしい。しばらく目を閉じてじっとしていた征士が話しかける。

「今のしのさんくらいの時に再会できてたら、きっと今、もっと純粋に幸せにやれてたよな」

「そんなこと、ないよ?」

 あっさりとそんな風に否定されて、征士は驚いた。それも、このちびっこしのさんに否定されるとは思わなかったので、なおさらだ。そう否定する理由が聞きたかった。ちびっこの口から。

「どうして?」

「だって、ちっちゃい時からせぇさんと一緒だったら、ぼくきっと、修行頑張らなかったもん」

「そうか?」

「そぉだよ。ぼく、なまけものだもん。せぇさんも知ってるじゃない」

「めんどくさがりなのは知ってるけどな。でも、蒼龍が、俺っていう奴がいながらしのさんが修行の手を抜くわけがない、って太鼓判押してたぞ」

「やだぁ。そぉりゅうってば、かいかぶりだよぉ」

 けらけら、と志之武が遠慮なく笑っている。そういう志之武こそ、自分を過小評価しすぎだ、と征士などは思うのだが、今の志之武がそう言うということは、本気でそう思っているのだろう。困ったことだ。

「ぼくねぇ。せぇさんにまた会えるようにって、一生懸命頑張ったんだよ。えらいでしょ?」

「あぁ。えらいな。よく頑張ったな」

 よしよし、と頭を撫でられて、志之武はその頭を両手で抱え、嬉しそうに笑った。その無邪気な笑い顔が、可愛らしくて無性に抱きしめたくなってしまう。実際に実行に移せば、志之武もまた征士にしがみついてきた。

「せぇさん。だぁいすき」

 それもまた、志之武の取り繕うことのない本心の一つだ。もちろん、普段でも、心が弱っている時や行為の最中になら口走ってくれるが、こうやって自分から抱きついて無邪気に言ってくれるのは、やはりこの姿だからなのだろう。

 なんだか、今日一日で志之武の本心をいろいろ聞いてしまった気がする。何だかんだ言っても、今日は貴重な体験をした特別な一日だった。

「さ。身体も暖まっただろ? 先に上がって寝ちまいな。明日もしばらくその姿でいなきゃいけないんだから」

「はぁい」

 素直に返事をして、征士に湯船から降ろしてもらった志之武は、背伸びして浴室の扉のノブを引き、脱衣所へと姿を消していく。

 明日は、大体昼ごろには志之武の姿も元に戻るだろうが、何時、と限定が出来ない分、家にいるしかない。いつ元に戻っても良いように、と考えると、半裸状態でいるしかないだろう。服を破くわけにはいかないのだ。

「あと半日。俺の理性、もつかな?」

 ずいぶんと情けない弱音を吐く、征士であった。




 結局、翌日は二人揃ってキングサイズのベッドの上でごろごろと半日を過ごし、とろとろと居眠りを始めたところで、志之武の姿は元に戻った。
 すぐそばにいて、その肌に触れていた征士も、突然始まった変身に驚きはしたものの、変身が一瞬だったせいもあり、すぐに順応してしまっていた。

 元に戻った途端、征士が我慢の限界とばかりに志之武に襲い掛かってしまったのも、無理のない話だったろう。本当に、征士の忍耐力を試す一日だったのだから。

「なぁ、しのさん」

 運動して、やっと一息つけた征士は、その腕の中でまどろむ恋人に、いつものように優しく声をかける。

「ん?」

「たまには、ちびしのさんも良いもんかもな」

 ぴく。征士の言葉に、何故か志之武が固まる。それから、ぷいっとそっぽを向いてしまった。どうしたのかと顔を覗き込み、征士はふくれる志之武に睨まれてしまう。

「今度はせいさんをちっちゃくしてやるから」

「何だよ。そんなに嫌がることないだろ。子供のしのさん、めちゃくちゃ可愛いんだよ」

「やだって、言ったじゃない」

「そういや、言ってたな。エッチできないから、って?」

「……せいさんのバカ」

 今度こそ、耳まで真っ赤になって、タオルケットを頭から被ってしまう。そんな蓑虫状態の志之武を上から抱きしめて、征士は大変嬉しそうに声を立てて笑い出すのだった。



おわり





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