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その後。
竜に追い払われて逃げ出した天狗たちは、ちゃっかり志之助がすべて使役してしまった。
神に仕えていたはずのその天狗たちは、あまりにもそのいたずらが度を超していたため神に見捨てられてしまったのだという。
天狗が仕える神の名は禁句となっているらしく、志之助も追求しなかったので、征士郎にはわかりようもなかったが、ただ一つだけ確信していることがあった。志之助がその天狗たちを使役した本当の理由は、なんとか更正させて神のもとへ返すことなのだと。
結局、行き場をなくした天狗たちを引き取った直後、征士郎の腕の中で意識を失った志之助は丸一日目を覚まさなかった。ただでさえ刀傷で高熱を出していたというのに、天狗を使役するのに余計な法力を使ってしまったのだ。目を覚ませるはずもなかった。
目を覚ましてからも、血の足りない身体は重すぎて、起き上がるのに三日の時間を費やした。立ち上がって歩き回れるようになったのは、それからさらに二日後のことだった。
志之助が立ち上がれるようになった日、志之助の回復を待っていたらしく、風魔忍者たちが宴会を開いてくれた。
恐ろしいという印象ばかりがあった風魔忍者だったが、里を助けてくれた功労者をねぎらうだけの優しさと心は持っていたようで、その日の宴会はたいへんにぎやかだった。
というより、どうやら忍者たちは宴会好きだったらしい。途中から主役の志之助もそっちのけで彼ら自身が楽しんでいたから。
今後も志之助はきっと、何も言わずに征士郎を巻き込み続けるのだろうが、征士郎は志之助が意識を失っていた間ずっと考えて、志之助に自分の出来るかぎり協力しようと決めた。
志之助に頼られているという自信がついたのか、志之助に任せておけば大丈夫と思ったのか。本当のところは征士郎にしかわからない。
だが、これで二人の関係が少し変わったことは確かだった。
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