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風呂の水音はいつの間にか止まっていた。
ベッドに横たえられ、一糸纏わぬ姿を俺の前にさらして、恥ずかしそうに濡れた目で俺を見上げる彼に見つめられながら、俺はゆっくりと自分の衣服を脱いだ。
彼に比べれば歳をとった身体は、その分だけ男らしい精悍な体つきをして、それだけが俺の自慢だ。この身体で稼いでいたこともある。AV男優として。今は昔の話だ。
最後に脱ぎ捨てたそれに隠されていた俺のイチモツを見て、彼の顔に恐怖が走った。
それは、仕方がないかもしれない。俺のものは、少し普通と違う。
「……何で?」
「何が?」
「それ、形が変。でこぼこしてる」
それ、と言って、彼は目で指し示す。見つめられたこいつを、俺もまた見下ろす。
「恐いか?」
「……少し」
「シリコンだよ。昔、そういう男優をしていた名残だ。我ながら、少し反省してる」
その分だけ、優しく慣らしてやることも覚えた。気が狂うほど。昔少し付き合った、好きモノの男から、身体が離れられない、などとお褒めの言葉もいただいた。自信はある。
「俺に任せな。痛くはしない」
「はい……」
頷くしかないのだろう。不安そうに、彼はそう答えた。
まぁ、百聞は一見にしかず、だ。一回きりの相手だし、それだけ思い出に残るセックスをしてやるつもりだった。
ベッドサイドに手を伸ばし、備え付けのゴムを取る。ビニールの包装で彼の身体をすっと撫でる。十分に火照った身体は、それだけでも刺激らしく、びくりと身体を震わせた。
「気持ち良いのか?」
「……恥ずかしい」
「良いさ。痛いよりはずっと良い。素直に感じな。イジメやしないよ」
顔を覆った彼の手をどけ、鼻の頭にバードキスをする。触れるだけのキスを受けて、くすぐったそうに笑った。笑顔が可愛い。
こりゃ、惚れるかも。一回きりとわかっている相手に、困った感情を予感して、俺は肩をすくめる。
彼が意識を飛ばす前に、俺は彼の見ている前で、自分の息子に服を着せる。相手が男であって、使う場所が場所だから、気を使うのだ。相手が女なら、生で入れることもありえるが、男相手でそんな無茶はできない。相手を気遣うなら、特に。
そうして準備をする俺を、不安そうに見つめていた彼が、何を思ったか、身体を起こした。俺の懐に、身をかがめる。
「それ、触ってみても良いですか?」
「触りたいのか?」
「……興味、あるから」
じゃあ、触りなよ。そう答えて、彼の手元に突き出してやる。そっと触れられて、息子が嬉しそうに跳ねた。お返しをするように、俺も彼のモノに触れる。そっと、元の位置に横たえながら、彼の手から自分を離さないように、圧し掛かった。
触れている手が、少しずつ大胆になる。触っていただけのそれが、でこぼこにあわせて指を這わせ、握りこんでくれる。同じように、俺も彼のものを愛撫した。
まったく同じ動きをするのが、彼の心に火をつけたらしい。俺の性感帯に指が伸びてきた。喉の奥で呻き声を押さえ、同じ事を施す。
「あぁん」
そこは、彼にとってもイイトコロだったらしい。甘い声が漏れた。それはもう、俺を誘っているとしか思えない。
耐え切れず、俺を受け入れてくれる後ろの口に手を伸ばした。まだ使われたことのないそれは、どうしたらいいのかもわからないらしく、きゅっと唇を噛み締めている。
「力、抜いて」
指先でつつきながら、要求する。少し硬くなっていたそれが緩む。が、指を少し入れると、ぎゅっとしがみついた。
「痛っ」
「ダメか?」
ダメといわれても、やめる気はないのだが、あくまでも優しい声色で問いかける。すると、彼はまたその力を緩めてくれた。ふるふると首を振る。
「ダメじゃ、ないです」
でも、身体は受け付けそうもない。
ならば。俺は、ローションを使わない良い手を知っているのだ。彼の手を俺から離し、俺のものに比べれば綺麗なピンク色をしているそれに、口を寄せる。
痛みで萎えかけたそれは、俺の口の中で、歓喜に震えだす。恥ずかしいが嫌ともいえず、彼は口を押さえて声を殺している。
「声、聞かせろって」
「……だって、恥ずかしい」
「恥ずかしくない。生理現象だ。堪えることはない」
それに息がかかるくらいにすぐそばで、囁いてやる。その息遣いだけで快感らしく、ぴくぴくとそれは震えた。咥えて吸い上げれば、嬉しそうに筋が張る。
「あっ」
止められていた声が溢れてきて、俺の耳から快感を刺激する。
それが、皮切りになった。
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