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 ランパブやらヘルスやらが乱立するこの街で、不思議なことにホテルが少ない。市街地に3軒しかないってのは、困ったもんだ。

 とりあえず、そこから一番近いホテルに、俺はその彼を連れ込んだ。界隈では一番高い、ボッタクリの店だが、仕方がない。

 あまり派手じゃない部屋を選んで部屋に入る。自動精算なのがありがたい。男を連れ込む時は、相手の緊張を最大限和らげるのに効果を発揮する。男同士なんて、普通は知られたくないもんだ。

 部屋は、若干小ぶりだが、落ち着いた感じのものだった。照明が落とされていて、ブラックライトで壁の絵が浮き出ている。水族館のイメージだ。

 こんな部屋にも、実ははじめて入るらしく、彼は俺に背を押されて部屋に足を踏み入れ、物珍しそうに回りを見回した。

 俺はといえば、荷物になるハンドバッグをソファにおいて、バスルームへ直行する。

 湯をはる音をかすかに響かせて、部屋に戻ると、彼は所在なさげに佇んでいた。

「あの。……ボクはどうしたら良いですか?」

「とりあえず、そこに座んなよ」

 指示されたとおり、手荷物になっていたカバンをソファにおいて、ベッドの端に腰を下ろす。俺は、その背後に回り、後ろから抱き寄せた。

「身体を楽にして。俺に身を任せれば良い」

「はい」

 抱き寄せた途端に緊張した身体から、言われた通り、力が抜ける。俺がヤクザであることはわかっているくせに、意外と大胆だ。その方が、痛いこともなくてことが済むのだから、正解なのだが。それで大丈夫なのか、心配になってしまう。

「お前、恐くないのか?」

「……え?」

「知らない男に、身体預けて。しかも俺、ヤクザだぞ?」

「えぇ。でも、ここまで来て抵抗するのもおかしいし、望んだのはボクですから」

 へぇ。肝が据わってる。なかなかの度胸だ。

 感心して、俺は、ふっと笑った。笑った息が、目の前の彼の髪に当たって、さらりと揺れる。

「どうして笑うんですか?」

「いや、大した度胸だと思ってな。それだけさ」

 こういう肝の太い奴は、俺の好みに合致する。自分が、自分の好みは結構うるさい、と思っている所以だ。誰でも良い訳ではない。ただ、外見より中身を重視するだけのことだ。それが、他のヤツにはわからないらしいが。仕方がないか、見えないんだから。

 肩口に口付けを落とすと、彼の身体がピクリと反応した。なかなか、敏感だ。それでこそ、楽しみ甲斐もある。

 後ろから首筋に舌を這わせ、手は前をまさぐっていく。のっぺりと平坦な胸は、男の特徴だが、だからこそ、そこにある小さな突起を悪戯するように触れるのも、楽しい。そこが、彼もやはり性感帯らしく、触れるたびに肩を震わせる。

「可愛いな」

 耳元に囁き、その耳たぶを甘く噛む。あっと彼が小さな悲鳴を上げる。それは、嬌声に聞こえて、俺を煽る。

 大人しかった息子が、目を覚ました。

 胸の突起を悪戯する指が、いつの間にかそれだけを弄っている。ふるふると身体を震わしながら、彼は堪えるように目をつぶり、唇を噛んだ。声を出すのが恥ずかしいのだろう。

「ガマンすんなよ。声出しな。ここはそれが許される場所だ。俺しか聞いてない」

 耳元で囁きながら、片手を彼の口元にやった。人差し指で唇をなぞる。

「舐めて」

 命じられて、指の腹がぬめりと温かいものに触れた。タイミングを合わせて、乳首の先を撫でる。

「あっ」

 思わず上げられた声は、本能の欲望に濡れていた。





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