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 着いたのは、フレンチレストランだった。夜は本格派フレンチフルコースが振舞われる店で、この時間はランチメニューを提供しているらしい。最近、ランチタイムに店を開く飲食店が増えたなぁ、と実感するところなのだが、これも流行なのだろうか。

 平日は、近所のオフィスに勤める会社員で満員の店内も、土曜日ではちらほらと空席が見える、程よい客入りだ。しかも、どうやらこの店に、席を予約していたらしい。名前を言うと、リザーブ席に案内された。

 ここに案内したギャルソンに、先に話は通してあったのか、春賀は持って来た紙袋を渡した。それを、ギャルソンも何も問わずに受け取り、奥へ引っ込んでいく。

「昼間っから、ワイン、大丈夫?」

 引っ込んだギャルソンは戻ってくる気配がなく、春賀は向かい合って座った俺に、早速そう尋ねた。考えるまでもなく、別に車を運転する予定もないので、あっさり頷いた俺に、春賀は何故か嬉しそうに笑った。

 タイミングよく、ギャルソンが顔を上げた春賀に気づいて近づいてくる。

「すみません。マドンナ、置いてますか?」

「本日のテーブルワインになります。お二人分でよろしいですか?」

「お願いします」

 マドンナって、コンビニでも売っている安いワインの名前なのだが。なるほど、ランチのテーブルワインにはもってこいかもしれない。

 それにしても、春賀はあれが好みか。ちょっと理解を深めた俺だった。

 予約時に注文を済ませていたらしい。まずワインが運ばれてきて乾杯したところに、サラダが運ばれてきた。大皿に二人分と取り分け皿を持ってきて、目の前で取り分けて給仕してくれる。

 ランチにしては気が利いていると思う。夜なら当然のサービスだが、夜はサービス料もたっぷり取っているのだから、ランチのサービスは気が利くといわざるを得ないだろう。

 サラダに次いで、軽くトーストされたフランスパンが出され、一緒にコーンスープが出てきた。この寒い時期にはありがたいメニューだ。

 その後出てきたメインディッシュは、春賀が注文したものがその日のお勧めコースだったらしく、周りでも同じものを食べている人が多かった、牛フィレ肉のステーキだった。

 このランチで、いくらなんだろう?

 その肉も、かなり良い肉を使っていて、多分夜の営業に使う肉と同じものだ。ちょっと春賀の財布を心配してしまった俺である。

 食後のデザートに、いよいよ本命の登場だった。さっぱりとしたバニラアイスに、冷凍庫で冷やしたらしい固めのトリュフチョコがトッピングされ、チョコレートソースがバニラの白とチョコレート色をまとめている一品だ。持込のチョコレートを使って、デザートに仕上げてくれたらしい。

 こりゃ、春賀の作戦勝ちと言うしかないだろうな。

 ねっとりした甘さはちょっと苦手な俺は、バニラアイスやらチョコレートやらと、いつもなら敬遠するものを美味しく味わって、内心で白旗を振った。

 お返しは、春賀もびっくりするようなことを企んでおかないと、と気を引き締める俺だった。





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