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翌朝。
さすがに無理をしすぎたか、少々痛みの残る腰を孝虎に支えられて、春賀が案内された先は、住吉組の屋敷の離れだった。
孝虎の指示によって拉致された、本来であれば顔も見たくない男が、そこに無様な姿で転がされていた。服はずたずたに切り裂かれ、両手を後ろ手に縛られて、口には猿轡がされている。
隣の孝虎が、普段とは比べ物にならない冷たい声で、一言指示を発した。
「やれ」
その言葉に従って、部屋の隅に待機していたカメラクルーが動き出し、明るいライトが煌々と焚かれ、ついで、屈強な体つきの男が三人、そこに群がっていく。
目の前で繰り広げられるのは、春賀もその身に受けた、非道な行為。男が男を強姦するという、この上なく人の人権を無視したものだ。しかも、それを本格的な業務用のカメラで撮影するということは、その後編集して、好事家へと売りさばかれるのだろう。
そこに現れた春賀を睨みつけていた佐々木の目に、恐怖が走った。自分の身体に、六つの手が這い回る。手に持ったナイフで、とりあえず身についていた服は剥ぎ取られ、恐怖に縮こまる情けない男根の根元は紐で縛られ、何の水分もまとわないまま菊門が乱暴に犯される。
指が突っ込まれた瞬間、その口から発した悲鳴は、猿轡に吸い込まれ、まともな声にならなかった。
そんな一部始終を、春賀は、痛そうな表情で見つめていた。孝虎に言われていた通り、情人であることをアピールするように孝虎に甘えて寄り添って。
お前が犯した相手は、ヤクザの情人なのだ、と。お前の犯した罪は、お前の身体で払え、と。そう、知らしめるように。
やがて、組員なのだという陵辱役の男の男根がその身体を犯し始めると、部屋に佐々木の悲鳴がこだました。
孝虎がそれを見つめる目は、冷たかった。
それと同じことを、恋人はその男にされたのだ。しかも、二回も。その程度の悲鳴で、心は動じない。逆に、多少は胸のすく思いがする。
しばらくして、孝虎はその腕にすがりつく春賀を見下ろした。
「どう? これで、満足してあげられそう?」
「……これだけ?」
「春賀も、さすがヤクザの血を引いてるよな。この惨状を、これだけ、って言えるのか」
くすくすっと、それは耳慣れた笑い方で、孝虎は春賀の答えを笑った。それから、隣に控える、春賀もまだ見知っていない、このグループのリーダーらしい男に、指示を出す。
「終わったら、目を潰して放り出せ。救急車くらいは呼んでやれよ」
「わかりました」
孝虎の指示を受け、リーダーらしい男は深く頭を下げる。その彼に見送られて、孝虎は春賀を連れて離れを出た。
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