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 バスルームに戻れば、春賀はすでに湯船に浸かった状態でいた。湯が少し緑に見えるのは、入浴剤を入れたせいなのか。ほのかにゆずの香りがする。

 手早くシャワーを浴びて、春賀が浸かっている大きな湯船に浸かり、春賀を背中から抱き寄せる。

 されるがままになっている春賀の髪から、ほんのりと柑橘系の香りがした。備え付けのシャンプーの香りだ。

 そもそも、春賀は今夜二回目のバスタイムである。その香りがしてもおかしくはない。

 入浴剤の効果なのか、その湯は湯自体がすべすべとした手触りで、春賀の身体を撫ぜれば、その手触りは最高級品の絹にも優るものだった。思わず執拗に撫でてしまう。

 その孝虎の手の感触が、特にイヤではないらしく、春賀はそっと孝虎にその身を預けた。近づいた額にキスを落とせば、春賀の方からそれを唇に引き寄せる。

 孝虎の指は春賀の胸の飾りを弄りだし、春賀は眉間に皺を寄せて、波にさらわれないように孝虎の肩にしがみつく。

 そうして、どちらからともなく、またキスを交わした。最初は触れるだけだったキスが、貪るものに変わっていく。

 そうしてディープキスに持ち込んでしまえば、その先は経験のない春賀は、まさに「されるがまま」状態だ。初ディープキスが気持ちよかったのか、うっとりと眼を潤ませて、孝虎を見つめた。

「春賀」

「……ん」

「愛してるよ」

 すっかり力の抜けた春賀と対照的に、興奮気味の孝虎がかすれた声を春賀の耳に吹き込む。春賀は、その告白に蕩けそうなくらいに幸せそうに笑った。

 その肌を撫でながら、徐々に下に下がっていく孝虎の手が、やがて春賀の牡の象徴に辿り着く。それは、キス一つで感じてくれた証なのだろう。すでに、欲望を示して勃ち上がっていた。それを、大事な宝物を扱うようにそっと撫でる。

「まだ触ってなかったのに。キスで感じちゃった?」

「……イジワル」

「イジワルなんか、しないさ。お前を、トロトロに蕩かして、感じさせてやりたいだけだ」

 わざと取り違えて、春賀を煽るように睦言を囁く。孝虎の手に捕らえられた人質は、そんなベタなセリフでも、敏感に身体を震わせた。

 確かに、春賀は初心者なのだろう。だが、その期待も春賀の反応からは感じられて、孝虎は安心してその愛しい恋人に愛撫を与える。まるで、素直に感じていることを誉めるように。

 片手は胸を、片手は下腹部の敏感な場所を、同時に攻められて、さらに首筋や耳たぶを舐め上げられては、そんな初体験の快楽に春賀が抗えるはずもない。その上、春賀に抵抗する意思がないのだから、快感はあっという間に最高点まで引き上げられてしまう。

 それでも、春賀は荒くなってしまう自分の息を殺して、受ける快感をかみ殺す。こんなに簡単に追い上げられてしまうことに、罪の意識でも感じてしまっているかのようだ。

「春賀。気持ち良い?」

「……んっ。い、イイっ」

「だったら、声、聞かせてよ。我慢しないで」

「で、でもぉ……、ぅんっ」

「声出ちゃうほどは、気持ち良くないのか? なんか、自信なくしちゃうなぁ、俺」

 もちろん、イジワルを言っている自覚はある。春賀が恥ずかしがっている気持ちは、孝虎にもわかるつもりだった。攻め、受け、の違いこそあれ、孝虎だって童貞を卒業した時は、些細なことにも恥ずかしがっていたものだ。

 意外と、男という生き物は、事ここに至った重要な時に、胆の据わらない生き物なのである。

 わかっているから、促してやるのだ。

 まぁ、その理由の半分は、孝虎の好き心なのだけれど。

「えっ、ち、ちがっ」

 案の定、慌てた様子で取り繕おうとする春賀に、孝虎はとどめの一撃を加える。ありがたいことに孝虎と比べれば若干小さめの、だが立派な男のソレの、先端の割れ目をキュッと強めに擦ってやる。孝虎がこれが効くから、それをそのまま実践してみているだけなのだが。

「っんあぁっ!!」

「ん。イイ声」

 強烈な快感に身を捩って、悲鳴を上げた春賀に、孝虎は満足そうに誉め言葉を囁く。そうして、その耳をゆるく噛み締めた。

「あっ、やぁっ」

「イヤ?」

「やっ、ちがっ。イイのぉっ」

 春賀の理性は現在の状況をわかっているのかどうなのか。素直に快楽を口にする春賀に、孝虎は実に満足そうに笑った。





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