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開店後、1時間ほどして、問題の女性は彼氏連れでやってきた。
その姿は、確かにふっくらとふくよかな体型をしていて、それでいてキュートでセクシーな印象があった。
この外見で、智紀が言うには、きっぱりさっぱりした物言いをし、侠気溢れる姐御肌なのだという。
なるほど、男受けはいいだろう。恋人として、と見ると微妙ではあるが。
バーテンの格好をしている智紀に、やっぱりイイ男だわぁ、などとからかって、恋人の嫉妬を自ら誘って見せる。
なかなかに恋の醍醐味をわきまえた女性だ。それが計算ずくの行動であるのなら、だが。
それから、どう見ても高校生の和樹を紹介されて、彼女は問題発言をする。
「いやぁん。カワイイ。もう、ヤマちゃんってば、もしかして意外と面食い?」
「意外は余計だし、面食いで悪いか?」
「悪くないわよぉ。だってほら、ヤマちゃんが弟君と恋してるって話聞く前だったと思うけど、去年のミスをあっさり袖にしたって、学内の噂だったんだもの。で、そのわりには、私には手ぇ出すしさ。美人には興味ないのかと思ってた」
ひたすらに、和樹にとっては初耳は発言が飛び出して、和樹は驚いて兄を見つめてしまう。
隣で、もう心配の必要はないとわかっていながら付き合っている隆久が、それはそれで心配になって和樹を見守っていた。
そもそも、和樹と智紀の仲が、智紀の仲間内に公表されていることも驚きだし、大学のミスに選ばれるほどの美女を振っていたことも驚きなのだ。
「でも、そうかぁ。こんなカワイイ恋人がいれば、他の女になんか目も行かないわよねぇ」
「おたま。和樹くんがびっくりしてるだろ」
隣から、彼女の恋人と紹介された男性が、そんな風に突っ込んで彼女の暴走を止めてくれた。気にした様子もなく、ケラケラと彼女は笑っている。
「ねぇねぇ。紹介してくれたってことは、今度から部屋コンの会場にヤマちゃん宅も加えていい?」
「ダメだ。和樹に悪影響与えるんじゃない」
「もぅ。意地悪」
拗ねたようにぷっと口を膨らませる。そのほほをぺちっと挟んで、彼氏が膨らんだ口を潰して見せる。
なんとも息の合ったふざけ合いに、和樹は思わず笑い出してしまった。
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