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翌日は日曜日。
あれだけはしゃいでも次の日にはけろっとしているケン坊とミーに強請られて、俺たちはいつもの通り森林公園にお散歩に出かけた。
ちなみに、一番ダルそうなのは恩。
そりゃそうだ。昨夜は夜中まで離してやれなかったもんな。金曜は翌日の予定があった分早く寝てしまったので、丸々五日ぶりだったんだ。しかも、あれだけ甘えられたら、俺の理性がもつわけがない。
ミーは、さすがにたった一週間では人に対する警戒心は取れなかったらしく、ケン坊のお友だちの飼い主さんたちに近づいた途端に、俺の腕から飛び降りようとした。
って、この高さを飛び降りたら、さすがに子猫じゃ危ないだろう。大慌てで捕まえたよ、もちろん。
イヤ〜、と言っているのが俺にでもわかるくらい大暴れをするミーに、俺はぎゅっと抱きしめて頬ずりをしてやった。ケン坊と違ってミーには言葉は通じない。だから、行動で安心させてやるしかないんだ。
先週は一度も公園に来なかった恩と愛犬愛猫を、奥さんたちは普段どおりに迎えてくれた。大暴れのミーに不思議そうな顔をするので、一週間前の一件を話すと、みんなが揃って憤慨してくれる。
ケン坊の足に嫌悪感を見せなかった人たちだ。内心がどうでもね、表には一度も出したことがない。だから、この人たちは優しい心の持ち主だと太鼓判が押せる。
「まぁ、失礼しちゃうわね」
「子猫を叩くなんて、どんな神経かしら」
「うちも今まで主人が休みの日はみんなで行っていたんだけれど、確かに感じが悪いわよね、あのペット預かり所。やっぱり、そうなんだ。もう行くのやめようかしら」
「そうよそうよ。もう止めたほうが良いわ」
「影でうちの子が叩かれてるかもと思ったら、連れて行く気にはならないわねぇ」
「ペット預かりなんて斬新なことだもの、どんなものかと思っていたけれど。そうなのねぇ、やっぱり」
「大切な私たちの家族ですもの、大切に預かってくれなくちゃ困りますわねぇ」
ほらね。こんな具合だ。
おっとりした奥さんもいれば、噂好きのおしゃべり奥さんもいる。きっと、あっという間に噂は広まることだろう。復讐としては妥当なところかな?
ケン坊はといえば、どうやらミーの相手はご主人に任せたらしい。友達と一緒に遊びに行ってしまっている。今日はどこまで探検に行くつもりやら。
気がつけば、ケン坊と出会ってもうすぐ一年。
愛犬と一緒の日々はただ淡々と、しかし着実に、幸せを呼び込み過ぎていく。
願わくば、こんな日々ができるだけ長く続きますように。
春のうららかな日差しの下、俺はのんびりと空を見上げ、満足の笑みを浮かべた。
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