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 そうこう話しているうちに、学校の前に到着した。
 コンクリートの四角い門柱にレールの上をガラガラと音を立てそうな横に移動する鉄製の門柵。
 目の前に立ち塞がる横長四階建ての校舎は築十年に満たないが故に多少おしゃれな外壁を使われているものの、私学と比べるべくも無い面白みに欠ける鉄筋コンクリート造り。
 右手はL字の形に別の校舎が渡り廊下で繋がれていて、二棟の校舎に見下ろされる位置に建物らしい屋根が見えないことから低層の校舎があるのでなければそこがグラウンドだろう。
 その奥に高層マンションらしい建物が見えていて、周囲は雑木林に囲まれていた。

 公式資料によれば、生徒数は千五百名ほどで卒業生はまだいない。
 最高年齢で二十二歳、新たに能力者が生まれる要因も無いので最年少の年齢もどんどん上がっていて、今年で小学生は最後だそうだ。

 俺の歳と同じ高校二年生が最も人数が多くて四百五十人余り。クラス数は十二ある。
 その人数を一ヵ所に集めようというのだから、まったく迷惑な話だ。
 東西か南北かに分ければ一人の職員が一度に管理する人数も減るしもっと生徒の自由行動を認められると思うんだけどな。

 それとも、異能力者とかいう危険物は一ヶ所に押し込めておこう、っていう魂胆なのか?

 平日の昼間では学校内も授業中で、俺は皇に連れられて学校を囲む外壁沿いに左へ回り、寮の通用口から中に入った。
 寮の通用口には警備員らしい人が二人窓口にいて、身分証の提示を求められた。
 皇は学生証を、俺は召集令状をそれぞれ見せてようやく中に入ることを許される。
 何となく、学生を守るためというよりも学生の脱走を防ぐためのような存在で、皇のおかげで上向いていた機嫌が再び急降下した。
 隣にいる恋人は俺の性格をわかっていてくれているらしく、俺の反応にも楽しそうに笑うだけだったけど。

 エレベーターも存在するけれど階段を選んで二階へ上がり、左へ入った突き当りの部屋に案内される。
 すでに表札には名前が入っていて、生まれ年も書かれてあった。

「ずっと空き家だったから随分埃っぽいと思う。しばらくは換気しながら使って。
 シャワーとトイレは部屋の中にある。
 キッチンは共用、冷蔵庫は一人暮らしサイズが部屋の中にある。
 エアコンは棟内全室集中管理になってる。
 これが鍵。
 野菜とか生鮮品とかは週三回業者さんが放課後に売りにくる。
 それ以外の保存できる食品類とか飲み物系、文房具とか本とか、あと日用品とかは、四棟ある寮の各一階に購買部が分散してるから後で一緒に探検に行こう。
 生活費は毎月一定額の振込み支給と家の仕送りで賄って。
 ちなみに俺の部屋はこの隣」

 隣といいながら親指を立ててくいっと示したのは、この部屋唯一のお隣さん。
 つまり、他人に物音を聞かれる可能性の低い好立地だ。

 この寮は長方形のど真ん中を廊下が区切っていて、南側が部屋、北側が半分は部屋で半分は共有スペースになっていた。
 廊下の南側に整然と並んだ扉が二十個。
 北側の同じような扉が十個。
 廊下の端だけ変則的で、突き当たりに扉が二つ並んでいる。
 俺の部屋はこの突き当りのうちの一つで、隣は非常階段という名の外階段出口になっていた。
 で、さらに向こうに、リネン室、ロッカールーム、共有キッチン、共有トイレ、エレベーター、内階段という並びだ。
 つまり、学生の部屋は一階につき三十四部屋というわけ。

 俺の部屋は東端の北側。
 ベランダは北東向きで洗濯には向いていないけれどそこはそれ、皇の部屋のベランダを借りれば済む話だ。

「布団は昨日と今朝できっちり天日干ししておいたよ。
 夜を楽しみにしてて」

 夜をなんてそんな露骨な……。
 って、ふかふか布団の方か。

 明らかに十八禁な妄想を膨らませて顔を真っ赤にした俺の反応でその想像に気づいた皇が、耳元に顔を寄せて囁いた。

「そっちも、楽しみにしてて」

 そっちってどっちさ〜。
 いや、言わずもがなだけども。

「……うん」

 拒否する理由はないよな。
 もう一つの世界ではラブラブだけど、二人とも親元に住んでいて自由な時間がなかなか取れない分、欲求はほぼ常に不満。
 こちらでイチャイチャできるのなら、身体の欲求はともかく心は満たされそうだ。

 ほんの三十分前までどんよりブルーな気分だったというのに、今はバラ色の期待に胸を膨らませてる。
 俺って現金な奴だよ。





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