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 事情聴取は結局その時間の授業を潰して、終了チャイムを合図にして終わった。

 野川さんの恋人には言及されなかったから良かったけど、清水さんの首が危ないところだったんじゃないかと思う。

 二人が真剣に想いあっていて、二つの世界の両方でラブラブだからきっと運命の相手なんだろうと思うんだけど、そうは言っても大人と高校生だし、職員と学生だし、法律的にも社会倫理的にも不祥事扱いされることなんだよね。
 本人たちが真剣だからこそ、迷惑な環境だと思う。

 あと一年隠さなきゃいけないから、二人の想いを知っている分、協力を惜しむつもりはない。

 当事者はともかく、救出に関わった俺たちには普段通りの生活が戻ってきて。

 その昼休みだった。

 事態を思い返していて、不思議に気がついたんだ。

 問題の寮の部屋に繋いだ後のことだ。
 ゲートを双方向にして、両方共に入口になるから安全確保のために両方に壁をくっ付けてゲートの縁が見えるように壁を波打たせた。
 その時点で、能力を三つ使っていたはずだ。

 その状態で、野川さんの耳元に声を届けたよな、俺。

 能力四つ目を、無意識に使っていたんだ。
 しかも、脳のキャパ的にはもう一つ分くらい余裕が残っていた。

 もしかして、ゲートと安全枠はまとめて一つと換算して良いのかな?

「慣れると数増えるんだなぁ」

 みんなが食堂に行ってしまうので閑散とした教室で、持ち歩いているマイ箸を口にくわえたまま呟いたら、隣で満足の笑みと共に唐揚げを頬張っていた皇が不思議そうに首を傾げた。

 教室内に残っているのは俺たち五人だけで、みんな俺の手作り弁当を食べている。
 一ヶ月一万円で土日祝日含む毎日の昼食を請け負っている。
 いらない場合は俺が作る前に申告すること、食べなくても返金なし、という俺にとっての好条件にもかかわらず、全員が頼んできたんだ。

 皇に至ってはプラス一万五千円の夕食付き。おかげさまで、毎日料理するからどんどん腕が上がっていく。

 俺の呟きに不思議そうな顔をしたのはここにいる全員で。

「何の話?」

「能力の限界値の話」

 前置きして、たった今気付いたことを説明した。ら、感心された。

「慣れるんだな、能力って」

「それだけ頻繁に使ってるってことでもあるだろ。
 俺も、遠いところまで見通してたら目が良くなったしな。2.0は確実にあるぞ」

 鈴木の視力がやたら良いのは気付いてたけど、元からじゃないのにビックリした。

 何事も訓練次第ってことか。

「俺の能力なんて訓練しようがないもんなぁ。俺も何か応用技開拓しようかな」

 みんなでつつくように三段重ねのピクニックボックスにおかずが入っていて、今日もきれいに空っぽだ。
 パンパンに詰めてるから足りないはずはないけど、みんな良く食べる。

 その空の弁当箱を名残惜しそうに見つめながら植村がぼやいていて、俺は首を傾げて返した。

「足りなかった?」

「いや、多分誰か食い過ぎ」

「だって、旨いんだよ。箸も止まらないって」

 つまり、俺が意図して流した植村の独り言は流しっぱなしってことで。

 まぁ、本人が俺の言葉に真っ先に返してきたんだから、それで良かったんだろう。

「はぁ、腹いっぱい。もう食えねぇ」

 そういえば、反応の一つもなく黙々と食い続けていた皇が、自分の腹をポンポン叩きながらため息と一緒に言葉を吐き出した。

「犯人発見だな」

「幸せ太りしそうだな、天野」

「デブるなよぉ、天野。斎木に振られるぞ」

 植村、鈴木、高橋の順にからかわれる皇に、俺は楽しく笑わせてもらって。

 なんというか、平和だなぁってしみじみ実感する俺だった。





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