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 高橋と植村に宥めすかされながら暴れて引きずられてここにきた中学生は、椅子に座らされた途端に大人しくなっていた。
 大人しいというか、項垂れてるというか。

 なので、この子の相手は率先して動いた俺にたちに任せて、他のクラスメイトたちはそれぞれに勝手に休憩時間にしたようだ。
 徐々に教室内が騒がしくなる。

 そこまで一応自分の席のところに留まっていた鈴木も、こちらへやって来た。

「で? 何で死のうとしてたのさ」

 誰も自分からは問い質せなかった肝心の質問を気にせず口にできるのは、天然お節介な鈴木ならではだ。

 大方の予想通り、ムッとした顔で名前すらわからない彼は鈴木を睨み返した。

「あんたには関係ない」

「反応に捻りが足りないよ、ボク」

 返す刀なスピードでツッコんだのは、高橋だった。
 人に対する気遣いは仲間内で一番の植村ですら、苦笑いを隠せない。

 確かに、と頷いたのはあんた呼ばわりされた鈴木だった。

「確かに君の事情にはあまり興味がない。けど、見付けちゃったんだから見ない振りもできないんだよ」

「助かりたくなかったら、透視能力も遠見能力も瞬間移動もバカ力もないようなところに行って自殺しなよね」

 随分厳しいことを言うようだけど、それは間違っていないと思う。
 死にたいなら勝手にすれば良い。
 けど、それを見つけてしまった他人が自分の力を使って助けてしまうのをも、本人は拒否できないと思うんだよね。

「放っておけば良いじゃないか」

「見付けちゃったら放っておけねぇの。俺が寝覚め悪くなる」

 基本的に善良な人ほど、他人のことにでも無関心ではいられないものなんだ。
 自分に余裕がない人だと逆に他人のことなんか気にする余裕もないから、理解できない感情だけど。

 どちらの事情も経験がある高橋や植村は苦笑いするしかないし、彼らに対してお節介を焼いて救い上げた経験をしている鈴木も、能天気の性格をしっかり発揮してこの中学生に文句を言う。





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