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先にゲートをくぐって戻って来た植村が鈴木がいる方を振り返った。
「鈴木。中等部の神山先生の居場所わかる?」
「カミヤン? ちょい待ち。今探す」
透視は出来ても自分の視力の可視範囲以上遠い場所は見通せないと自己申告している鈴木は、そもそも裸眼視力が良いんだ。
人物の判別くらいならこの教室から学内全域カバーするらしい。
もちろん、文字が読めるほどではないらしいけど。
しばらくキョロキョロしてから、何か安心材料を見つけたようで、ほっと肩を落とした。
「職員室にいる。田端が今向かってるから、連絡つくだろ」
「植村。ちょっと手貸して」
鈴木が答える語尾にかぶって、ゲートから顔だけ出した皇が助けを求め、植村もまた現場に戻って行く。
ゲートの出口前が俺の席だからあまりスペースがない。
なので、俺も立ち上がって机を邪魔にならないようにどかしてみた。
俺の行動に習って周りのみんなが協力してくれたから、この辺に人三人寝られるくらいのスペースが空いた。
そこにタイミング良く三人が問題の自殺願望中学生を連れて戻って来た。
うちのクラスのこの時間の授業担当だった田端先生には問題の生徒がこちらに居場所を移動したことまでは伝わっていないはずで、多分誰か連絡に行った方が良いと思うんだけど。
「稲荷。職員室に繋いで。先生呼んでくる」
俺が立っていたおかげで空いていた椅子に高橋が中学生を座らせていて、皇はゲート前にとって返していた。
職員室の場所は分かりやすいから、すぐ近くの廊下に出口を変えるのも覗き窓で安全確認するのとほぼ同時。
「繋ぎ変えたよ。行ってらっしゃい」
ヒラヒラと俺が呑気に手を振ったのに同じく手を振り返して、皇がゲートを越えて行った。
見送って、俺は鈴木に向かって首をかしげた。
「鈴木。野川さんの居場所わかる?」
「野川さん?」
「白虎寮の寮長」
何で、と首をかしげ返してきた鈴木に簡単に立場を教えたら、俺が数少ない友人として頼ろうとしているわけではないことも理解できたようで。
野川さんが高校の三年生で俺の友人で、という背景事情は入院中に見舞い客として顔を合わせていたおかげで知ったらしい鈴木は、だからこそあまりキョロキョロする必要もなくこの校舎の階段付近に発見してくれた。
「こっちに向かってるみたいだな」
俺から連絡が行ったことと、こちらで救出するという知らせから、だったら助け出された問題児はこの教室にいるだろうと当たりをつけてくれたのだろう。
野川さんの桁外れた情報分析能力のなせる業だなぁ、と思うわけだ。
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