Normales Leben der Magier 1




 結局、怪我の状態が特殊なことによる精密検査のため、目を覚まして一週間後にようやく退院の許可が下りた。

 学校の様子は、毎日見舞いに来てくれるしもうひとつの世界でもずっと一緒の皇に聞いているから、特に心配もしていない。

 入院したことで良いこともあった。両親が見舞いに来てくれたんだ。
 入院直後に来てもらえなかったのは学校から連絡が行かなかったせいで、一週間も経ってから顔を見せてくれたのは清水さんが段取りしてくれたおかげ。

 見つかれば処分必至の内規違反行為のはずだから、そうして気を使ってもらえるほどの肩入れがありがたい。

 その頃には声も随分出せるようになっていたから、改めて能力の事を家族に黙っていたことも謝れたし、これからの生活の事とか卒業してからの夢のような話とか、思いつくままに語った。

 で、きっと家族にとっては不思議なお願いを二つした。

 今まで使っていた部屋は家族で好きに使って構わないので、今本や教材が詰め込まれている小さな本棚一つだけはそのままにしておいて欲しいこと。
 それと、その本棚にそのままぐみ高に通っていたら来年買うはずだった教科書と参考書を入れておいて欲しいこと。

 もちろん、もうひとつの世界のための予習復習用だ。

 こちらでは諦めざるを得なかったからこそ、来年の東工大受験は失敗出来ない。
 一方で夢を失った分、余計に気合いが入ってしまったんだ。

 次の日から、暇な入院生活の愛読書が教科書になってしまった。
 勉強が好きとはさすがに言えないんだけど、週刊誌程度じゃ暇潰しにならないし、テレビ画面を見続けていると頭痛がしてくるからこれも暇潰しには向かないんだ。
 あれこれ消去した結果の結論で、暇が潰せて身にもなる一石二鳥。

 放課後に欠かさず来てくれる皇には呆れられたけどね。

 退院してからは、平穏な日々が待っていた。
 毎朝六時には目を覚まし、俺は朝御飯を作って皇は二人分の洗濯。
 始業十五分前に教室に入ってイチャイチャして、内容は同じでも濃度の薄い授業をのんびり受けながら先の内容の予習もついでにしておく。
 放課後は、特カリか生鮮品の買い出し、どちらもない日は部屋に篭って独自特訓だ。
 で、夕飯作って皇と食べて、寝るまで二人きりのイチャイチャタイム。

 皇が好きだって自覚してからは積極的に甘えるようになった。
 友人たちに呆れられるくらい。

 それは向こうでもこっちでも一緒だ。
 どちらも皇から先に積極的に迫ってきていたのは周知の事実だったから、とうとう落ちたか、くらいにしか思われていないようだ。

 おかげさまで、俺の態度が変わったくらいでは、皇のファンからあからさまなイジメとか誹謗中傷とかには見舞われなくて済んだ。

 鈴木には、ツンデレは止めたのか、なんてガッカリされたんだけど。





[ 55/63 ]

[*prev] [next#]

[mokuji]

[しおりを挟む]


戻る



Copyright(C) 2004-2017 KYMDREAM All Rights Reserved
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -