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庭先へ出て、土方さんと肩を並べて歩く。
「いい天気だな」
「そーですね」
「…気温も丁度いいしな」
「そーですね」
「……笑ってよきかな、好きなのか?」
「そーですね…って、え?いえ、そんなには!」
さっきから『そーですね』しか言ってなかったし、そう思われちゃうか。
「そ、それより土方さんは…え、と副長って、どんなお仕事を?」
緊張していたが、なんとか笑顔作って聞いてみた。
「あ?そーだな…局長のフォローだな。部下のフォローもするな…。…フォローばっかりだな。あいつら、仕事ナメてやがるから」
土方さんは煙草に火を点けながら、青筋を浮かべてた。
「大変なんですね」
「ああ。菜々さえ良けりゃ、俺のフォローをして欲しいくらいだぜ」
「え?」
思わず聞き返すと、土方さんは慌てて手を振った。
「い、いや、別に他意はねーからよ」
その慌てる姿…なんだか可愛い。
私は思わず、クスクスと笑ってしまう。
「…なぁ、菜々」
「はい?」
「あんた…え、と…ゆ、夢とかあんのか?」
「え?」
また聞き返して、土方さんを見ると、何やら真剣な瞳と視線が合う。
そ、そんな目で見つめられたら、恥ずかしいってば!
「ゆ、夢は、普通に恋愛して、普通の人と普通に結婚する事です」
視線を外して、馬鹿正直に答えてしまった。
ダメだわ。土方さんと話していると、胸がドキドキする。
「なるほどな。やっぱ女は、普通の結婚を望むよな」
「そうじゃない人も居ますけど…」
「けど、アンタはそれが夢なんだろ?けど、もし…」
土方さんが言葉を詰まらせたので、チラリとそちらを見てみる。土方さんも私から顔を背けて、頭を掻いていた。
「もし、アンタが惚れた相手が普通の人じゃなかったら、どうする?」
「え…それは…」
今、まさに、その状況なんですけど。土方さん、素敵過ぎます。だから、答えは決まっている。
「自分の気持ちを優先します」
とは言え、相手の気持ちも一緒でなきゃ意味ないけどね。
「じゃあ、菜々。お前、俺に惚れろ」
「えっ!?」
命令口調でありながら、振り向いた土方さんの頬は赤くなっていた。
「…わ、悪ィ。い、今直ぐって訳じゃなくていいからよ。俺と付き合って、好きになってくれ」
え、何。告白?
なんか変な告白だけど、そんなの気にならないくらい、嬉しい。
「土方さん、私……」
私の言葉は続かず、気付けば土方さんの顔が目の前にあって、唇が重ねられていた。
「否定の言葉は許さねェし、俺以外の奴を好きになるのも、許さねェ」
離された唇から出た言葉。真面目でいて、どこか怒っているようにも感じる。
「否定もなにも……。もう、あなたが好きなんですが……」
熱い頬を見られないように、上目使いで見つめて言うと、土方さんは一瞬硬直した。
「マジでか」
「はい。土方さんは何もかも、私の好みです」
「……うわっ、なんか俺、カッコわる。一人でカッコつけて、カッコつけた分だけ、カッコわる」
ガリガリと頭を掻きながら、土方さんは顔を逸らした。
「そんな事無いです。素敵ですよ、土方さん。私、こんなにドキドキしたのは初めてです」
「……じゃあ、これからも、もっとドキドキさせてやるよ」
急に振り向いたかと思えば、力強く抱き締められる。
「はい、お願いします」
土方さんの匂いに包まれて、高まる心臓を落ち着かせようと、私は目を閉じた。
=終=
→あとがき
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