「ありがとう、銀ちゃん!」

恋人のとびきりの笑顔を見て、我慢出来なくなり、銀時は菜々の唇に自分の唇を重ねる。

「んっ!?」

菜々は突然の事に驚いたが、侵入してきた銀時の舌に応えるように、自分の舌を絡めた。ピチャピチャと重なった唇の隙間から、音が漏れる。銀時はそのまま菜々を押し倒し、その細い身体に跨った。ここで漸く唇を離して、

「いいよな?」

と真剣な声で囁くように言う。荒い息を吐きながら菜々は頷きかけたが、万事屋の他のメンバーを思い出す。

「待って…銀ちゃ…神楽ちゃん…と新八くんは…」

「二人とも定春の散歩に行ったばかりだ。あと一時間は帰って来ねェよ」

そう言って菜々の着物の合わせを開いた。首筋に舌を這わせ、ブラの下に右手を入れて直接胸を揉みしだく。

「ん…銀ちゃ…ん…ぁっ…」

「菜々…」

本格的に行為を始めようとした時、玄関の引き戸が開く音が聞こえた。そして、声も聞こえてくる。

「ただいまアルヨー」

「あれ?女性物の靴が…銀さーん、誰か来てるんですかー?」銀時と菜々はその声に青ざめる。

「ちょ、ちょっと…何が一時間よ!帰って来たじゃん!」

「おかしいな…。いつもは一時間以上散歩してんのに…」

「も、いいから早くどいてよ!」

小声で言い合い、菜々は衣服を整えて何事もなかったかのように、銀時と共に居間に行く。

「あ、菜々さんが来てたんですね」

「お邪魔してます、新八くん」

なんとか笑顔で挨拶をする。

「どーしたんだ、お前ら。今日は随分と早いお帰りじゃねーか」

「ギンタマンの録画予約忘れてたから、早めに切り上げたネ」

「ギンタマン〜?今日金曜じゃね?ギンタマンは木曜六時からだろ?」

「何言ってるネ。今日は13日の金曜日じゃなくて、13日の木曜日ヨ。銀ちゃん、そんなにジェイソンが好きアルカ?」

「えっ」

神楽の言葉に銀時と菜々は声をハモらせて固まった。

「あ、始まったネ」

神楽はテレビに釘付けとなる。

「神楽ちゃん、テレビに近すぎるよ。目が悪くなっちゃうよ。って…二人共どうしたんですか?」

動かなくなった二人に、不思議そうに尋ねる新八。

「あーいやー。…ちょっと俺たち出掛けてくるわ」

銀時は菜々の手を引っ張り、愛想笑いを浮かべて外に出た。行く当てもなく、ただ二人は手を繋いだまま歩く。

「ごめんね、銀ちゃん。私、スッゴい早とちりしちゃった…」

先に口を開いた菜々は、恥ずかしさから顔を真っ赤にして俯いていた。

「いやいや。俺も全然気付かなかったし…。でも、良かったんじゃね?」

「え?」

「今日はもう夕方だったしな。本当のホワイトデーは、朝からデートしような」

銀時は俯いたままの菜々の顔を覗き込んで微笑む。

「…うん!」

菜々も笑顔になり、頷いた。


=終=


→あとがき


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