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「ねえ、銀ちゃん。今日は何の日か覚えてる?」
「今日?」
万事屋の机で、いつものようにジャンプを読んでいたら、恋人の菜々がやって来て唐突に聞かれた。そういや今日は何日だっけと考える銀時。
「えーと…あ、新作エロDVDの発売日?」
「違うわ、バカたれ。何で女の私がエロDVDの発売日の確認をしなきゃいけないのよ。やっぱり、忘れてんのね」
「バカって…。銀ちゃんを苛めて楽しいの?Sですか、コノヤロー」
菜々はバンッと机を叩く。
「14日よ!今日は3月14日!ホワイトデーは期待しとけー、とか言っておいて、もう夕方よ!?連絡もないし、家に来る気配も感じられないから、文句言いに来たのよ!」
「あ」
「あ、じゃない!バレンタインの時はしつこくチョコを要求しておいて、お返しの日にはすっかり忘れるなんてサイテー!あげるんじゃなかったわ」
溜め息を吐いて、菜々は帰ろうと銀時に背を向ける。と、後ろから抱き締められた。
「帰んなよ…。ちゃんと用意してっからさ」
耳元で囁かれて、身体がゾクリとするが必死で平静を装う。
「すぐバレる嘘ついても無駄よ」
「嘘じゃねって。ちょっと来い」
銀時は菜々の手を引いて、和室に入る。菜々の手を離して押し入れを開け、布団をその辺に投げ捨て、奥から綺麗な紙に包まれた小さな物を取り出した。
「ホレ」
銀時はそれを菜々の手に渡す。
「本当に用意してたんだ…」
菜々は嬉しそうに、頬を染めて笑う。そんな笑顔を見て、銀時も笑う。
「だから言ったろ。用意してるって」
「うん。…でも何でそんな押し入れの奥に入れてたの?」
「バッカ、これが新八や神楽に見つかったら、ニヤニヤした目で見やがるんだよ。銀ちゃんをからかう絶好のチャンスだーとばかりになあ」
「あはは、成る程ねー。ね、開けて見ていい?」
「ああ」
ドキドキしながら、菜々は包みを剥がし、現れた小さな箱を開ける。
「わぁ、可愛いっ」
箱の中には、淡いピンクのパールのピアスが入っていた。
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