赤井さんの中の人が誕生日の小話
「っいやああああああっ!!」
 いつになく甲高い悲鳴を彼女は突然あげた。振り返って様子をみて見れば、スマホの画面に触れていた指ががくがくと震えていたのだ。
「どうした?」
「ぴ、ピーターの吹替の人が」
「ああ、君が俺と"声が似ている"と言っていた」
「また年取っちゃったああああ……」
「……」
 卓上カレンダーを見ると、今日は12月2日……彼女のスマホの画面に映っていたのは、ある海外ドラマの吹替声優の誕生日が今日だというSNSの投稿。独特な声質である彼の声は、彼女にとっていつまでも聞いていたい特別なものなんだろう。
 しかし、彼の経歴の長さを見れば分かるが、年齢はそう若くない。おかげで目の前にいる一人の女はこのざまだ。『寿命あげたい』なんて俺の前でぶつぶつと言わないでくれよ、俺を残して死ぬつもりか。
「君はまず、彼が今日まで生きたことに感謝すべきじゃあないか」
「……そっか、確かに」
「それと長生きしてほしいのなら、身体にいいものを所属事務所に贈ってみたらどうだろう」
「……養命酒贈る」
「何故酒にした……」
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