16 領域に踏み入れるということA
「じゃあ、こいつと帰るから、お前もそのガキ送ってけよ」
「はーい……」
「ドアはこっちで弁償するってフロントに伝えておくから」
「うん、またね」

 兄には面倒そうに、兄の友人には露骨にいい顔で返事をした。
 兄とその友人は、このまま家に帰るそうだ。多分帰ったらお酒でも2人で飲んで、今日のことで身内に迷惑をかけたからとか言って、兄はこってり彼を絞るんだろうなあ。
 2人で私に背を向け、エレベーターに向かう……と思いきや、何故か兄だけ振り返り、私に大股で再び近づいてきた。

「おい、莉乃」
「……ごめんなさい」
「いや、そーいうの聞きたいんじゃなくて。まあ、誘拐される相手選ぶの間違えたことについては謝ってほしいけど……」
「……?」

 何のこと。その言い方だと、あの人以外だったら良かったのにって聞こえてしまう。
 ちら、と兄は後ろを確認する。兄の友人が随分遠くを歩いていることを確認すると、私の耳に顔を寄せた。

「あいつお前が小2の時、お前のこと好きだったから」
「ぅえ!?」
「な、お前ですらその反応するだろ!?だってそん時俺ら14だぞ、思春期真っただ中だっつーのに恋愛対象がお前なのは誰が見てもまずいだろ?あれから12年経ったけど、誘拐したってメールきた時は“嗚呼やっぱりか”って思ったんだよ……」
「……知らなかった」
「そりゃあ、紳士面してたからな」

 そっか、だからお兄ちゃんあんなに怒ってたんだ。

「あ、あと」
「まだあるの?」
「ハタチ、おめでと。たまには実家帰って、兄弟全員で居酒屋でも行こうな」
「……ありがと、考えとく」
「あと、挙式のことであいつの彼女がお前に“近いうちにまた会いたい”って言ってたな。あとで番号教えるから、連絡しとけ」
「う、うん?」

 ぼす、と兄の右手が私の頭に乗せられ、少し乱暴に撫でられた。
 兄は手を離すと、踵を返し友人の元へと駆け寄っていく。彼にすれ違いざまに頭を勢いよく叩き、今度は逆に追いかけられていく。
 ……26歳の2人が、“体だけ大きくなった少年”を体現していた。

「ボク達も早く帰ろ?」
「ああ、先に行っててくれないかな。車に乗ってて構わないから」
「うん!」

 沖矢さんが上着のポケットから車のキーを取り出しコナン君に差し出す。それをコナン君は受け取ると、兄と同様エレベーターがある方向へ走っていった。
 ホテルの廊下には私と沖矢さんだけが、残った。

「……莉乃さん、帰りますか?」
「!」

 私の手を引いて無理にでも車に連れていくのかと思った矢先に、この質問。
 手を振り払われると思ってるんだ、酔っぱらった勢いで“一緒にいるのやだ”って言ったこと絶対覚えてる……!

「え、と」
「……」
「……あ」

 どう返そうか迷っている間に、手は勝手に沖矢さんの上着の袖を小さく摘まんでいた。私と沖矢さんは2人でその手を見合ってしまった。
 ……これは、無意識に言えと私に訴えてるのか。

「あ、の……帰ったら少し……時間、作ってもらえませんか」
「!……ええ、もちろん」

 手をゆっくりと上着の袖から離すと、今度は沖矢さんによって自分の手首を掴まれる。そのままエレベーターまで歩いて向かっていった。
 ふと沖矢さんの横顔を見ると、表情はいつも通りの穏やかなものだった。

「……」

 兄の友人が実験という建前でキスをしようとした時、自分の感情を理解してしまった。
 ドアがコナン君によって壊されるより前に意識して、近づく彼を押し退けようと、私は両手を彼の前に出していた。
 ……沖矢さんの時は、肩が触れる距離でも離れようと思えなかったことを、すっかり忘れていた。

++++++++++
3571013972

35.710,139.72

35°42'36.0"N 139°43'12.0"E

という感じで変換しました。
「”」の次の数字がないとメートル単位で誤差が出るので注意。

一瞬それっぽいことを言う、元ロリコンの話。
それにしてもロクな男モブいないな・・・

ホテルドア弁償するとか、プール付きとかのホテルだから絶対いいドア使ってるよね。
コナン君フロントの人に開けてもらうまで待っててあげてwwと思ったけど、急に他人が泊まってる部屋を開けてくれるはずがなかったな・・・笑

↓↓お迎えに行く(意味深)

コ「昴さん、ボク先乗ってるから・・・」
昴「ああ、キーなら玄関に」
コ「・・・昴さん、今内ポケットに拳銃仕込んだでしょ!?」
昴「ああ、前みたいに牽制に使えるかなって」
コ「(前って・・・)」
誓「お?沖矢さんいいレプリカ持ってんじゃねえか。俺もなんか持ってくか、車に竹刀あったはず」
昴「(兄妹揃って竹刀持ち・・・)」
コ「2人共、これから何しに行くんだっけ?」

昴「莉乃さんをお迎えにいくついでに、誘拐犯にもあの世から迎えを呼んであげようかと」
コ「うん、迎えに行くの誓司さんだよね!?」
誓「どこに送るかは俺の勝手だよな」
昴「お義兄さんのご自由にどうぞ」
誓「あ゛?気がはえーんだよ調子乗んな、就職してから言え」
コ「(お義兄wさんww)ねえ、莉乃さんが大事にしたくないって思ってるの分かってるよね!?」

++++++++++
さらっとお義兄さん呼び、割とまともな理由でキレる。
コナンの説得により、2人は実質丸腰で行くことになりました(肉弾戦は別)。
ドアは仕方なくバーローに壊してもらいました。
※昴さんの台詞ちょっと覚えておくと今後の話が少し見えてきます。

※ガチネタ
昴さんがスマホで調べた数字をgglのマップで検索すると、誤差100m前後で屋内プール付きのホテルが見つかります。
ちなみに世良ちゃんは73巻辺りから出てくるので、まだこのホテルにはいません。(現在64巻一角岩〜66巻もののけ倉の間)
いたらちょっとばかり面白かったのにね笑。
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -