■ ” うたおう ”
太「・・・」
俺は、見てはいけないものを見てしまったのかもしれない。
『・・・』
一人の少女が夜に、病院の屋上で泣いていた。
見て見ぬフリをする?
駄目な気がした。
太「ねぇ・・」
『・・・?』
首をかしげて瞳で問う彼女。
きっと、この子も入院中。
太「なんで、泣いてるの?」
『・・・』
すると、彼女は静かにメモ帳とシャーペンを取り出し
"うたえないの"
そう、震えた文字を書いていた。
太「なんで?」
"トラウマかな"
トラウマで、声が出なくなることがあるなんて知らなかった。
声が出ないなんて、すごく不便だろうな・・。
"あなたは、好きなこととかあるの?"
太「うん、サッカー!」
何も迷わず答えた。
"失わないでね"
そういっていた。
彼女の声が確かに、聞こえた気がするんだ。
太「きっと、、また歌える。そのときに、聞かせて」
"うん"
よく、分からない。
けど、温かい気持ちになった。