私がみたのは

優しい暖かい、夢……





「雪村くん、今日は
日差しが気持ちいいぞ。君もどうだね」

「近藤さん、では私も」


ぽかぽか。ぽかぽか。

なんて幸せなんだろう


新選組は怖いだけの集団じゃないよ
て、京の人々に力一杯伝えたい

こんなに、いい人が局長なんだよって。


「永遠があればいいな、と
思わずにはいられません」

「雪村くんは嬉しいことを言ってくれるな」


綺麗な綺麗な秋晴れの空が
澄み渡っていて、

「皆さんの隊服の色は
空の色と少し似ていますね」


思わず口からでた言葉は

言ってから後悔した


だって空と同じなら
平凡な私は追いかけても追いかけても
皆さんの隣には並べない

遠くで見つめるだけ


嗚呼寂しいな寂しいな

「俺達が空なら君は
新選組を支える太陽だよ」


君の笑顔は
淀んだ曇り空を吹き飛ばせてくれるのだから

照れながら
私の頭を撫でてくれた

ごめんなさい近藤さん
ちょっとだけ泣かせてください

凄く嬉しくて
涙がでるんです

あ、近藤さんは
私が泣いたら困るかな
それじゃあ神様
少しだけでいいから
時間を止めてください


「太陽は泣いちゃだめですね」

皆さんを照らさなくちゃ
そういって
笑いながら頬を伝う其れを
止める努力をした


それでも涙腺は言うことを聞いてくれなくて

どうしょうどうしょう
困っていると近藤さんが

大丈夫だよ、

顔をしわくちゃにして
大きな笑顔をくれた







「トシを、新選組を頼んだ」

「え…?」




ぷつり、懐かしい記憶に
終止符を討った可笑しな言葉

怖くて
土方さん、近藤さんは?



斬首だ…






…して、…うして

どうして

どうして、
人は死ぬんだろう

どうして、
人は人に殺されるんだろう

どうして、
人は人を殺すんだろう

どうして、
近藤さんは

どうして


どうして


どうして



ねえ、なんで近藤さんが死ぬの



ほら、土方さんや皆さんが
心が、泣いている
涙が、痛い辛い苦しい其れが

流れる流れる
堰を切ったように止まりやしない




私が共にいさせてもらった時間は
ほんの僅かだけど
これだけはわかる

近藤さんは新選組の宝



奪わないでよ

政治のことなんか知らない
でも、徒花だなんて言わないで
彼等を見てよ、お願いだから


子供のように泣きわめいて

土方さんにすがりついて



逝かないでと強く呪った








真っ赤に腫れた

泣いたら腫れた



膨れ上がったパンパンの瞼



ふと、その醜い瞼を降ろして
脳を優しく浸透していく言の葉





「雪村くん、
俺は皆や君に逢えて誇りに思う

勝手かもしれないが俺は
君や皆のことも家族だと思っていたんだ


だから、泣かんでくれないか

また出逢うと約束するから
武士は約束を違えたりなどしない


また出逢う日まで達者でな」




魔法の言葉を吐いて
サァー…と消えてゆく




思えば

最期の最後まで
近藤さんは

私に笑ってくれました









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