「先輩、それってラブレターじゃないですか!」

春奈ちゃんがそういうと秋がうんうんと何度もうなずいた。わたしはさきほどベンチにおいたカバンをちらりとみて、深呼吸。心臓はだいぶ落ち着いてきた。
ラブレターなんてもらったのははじめてでどうしていいのかわからない。というか、本当にラブレターなのかも疑わしい。たしかに下駄箱から部室までドッキリと書かれた看板はみえなかったし、部室からグラウンドまで「ひっかかったね!」なんていいながら飛びだしてくる人影もみかけなかったけれど。「ドッキリじゃないとおもうけどなあ」秋はそういってほほえんだ。「わたしも違うと思います!先輩ならラブレターがきてもおかしくないですもん!」春奈ちゃんの瞳がきらきら輝いてみえる。いやいや、そんなこといってくれるのはうれしいけどそれはありえないって自分でもわかっている。

「で!どうするんですか?!」

「えっなにが?」

「返事ですよ返事!やっぱり返事はイエスですか?!ノーですか?!」

ずいずいと身を乗り出して興奮気味に喋る春奈ちゃんに思わず身をひいてしまうわたし。たっ確かに、これはラブレターなのだから返事を返したほうがいいのかもしれない…。でも…。

「ほらっ名前書いてないし…」

「そう言えばそうですね…」

しょぼんとうなだれて頷く春奈ちゃん。と、思えばまた瞳が輝きはじめた。

「それじゃ、差出人を見つけましょう!」

「えっ…ええっ?!」

元気を取り戻したはりのある声に自然と叫んでしまった。

「だってほら、やっぱり正体がわからないと答えの出しようがないですもんね!」

たしかにそうだけど、本人が名前を書かなかったのにわざわざ探す必要もないと思うんだけど…。

「あっ心配しないでください!情報収集は得意分野ですからわたしがすぐに手がかりを見つけてきます!」

すでにやる気満々の春奈ちゃんにわたしの本音はもちろん話せなかった。心のなかに本音は封印、こうしてはいられないとばかりにパソコンをものすごいスピードで打ちはじめた春奈ちゃんをこころなし涙の溜まった目で見つめる。隣の秋には肩を叩かれて微笑まれた。わたしに逃げ場は、ない。