小さいころはまだ携帯なんて持っていなくて、よく紙に文字をかいて友達にわたしていた。それはすぐに口で言えばすんでしまうようなことなんだけど、かわいい便箋にお気に入りのペンでていねいに文字を綴るだけでなんだかわくわくして、わたされるほうもなにがかいてあるのかなんて想像するだけでたのしくてしょうがなかった。けれどそれはあくまで小さいころの話。いまは携帯電話という便利なものもあるし意思を伝えるためにペンをとることはなくなった。
そう、だから手紙自体をみるのはかなり久しぶりなのだ。久しぶりにみる封筒は真っ白くてなにも柄のないものだった。ドキドキしながらなかば信じられない気持ちで糊付けされた封筒をあけてみる。ぺりっ。軽い、かわいた音。少し紙が破けてしまったけど、気にしないことにする。そして中身を確認。二つ折にされた紙が一枚だけ入っていた。ひらいてみると封筒と同じ白の便箋だった。読みやすい、綺麗な字で一言だけ。


ずっと好きでした


それだけ真ん中に書いてある。ほかにはなにも書いてない。それでもなにか書かれていないかと便箋の裏までみたけれど残念ながら真っ白だった。

「これ…」

まさかラブレター?いやいやまさかね。いまどきラブレターなんて、そんな…。
手紙を封筒にもどして肩にかけていたカバンへ押し込んだ。きっともうみんなは部活をはじめているだろう。急がなきゃ。