「神様なんてきらい」

ときがとまったようだった。かのじょのこえが、ことばが、しせんが、すべてがぼくにたいしてのものなのに、そのはずなのに、どうしてだろう。まるでそれはたにんごとのよう。すんでいるそのこえはとおくからぼくじゃないだれかへとはなしかけているようにかんじるし、しせんはぼくをとおりこしてもっとちがうところをみつめているみたい。でもぼくはかのじょがぼくにはなしかけていることをちゃんとわかっているからそのおおきなひとみをのぞきこむ。そこにはぼくがうつっていてやっぱりかのじょはぼくにはなしかけていたんだとすこしだけあんしんした。まあ、あたりまえだけど。なんせこのへやにはいまかのじょとぼくしかいないのだ。つまりふたりだけ。なんとしあわせなことだろう。いっそこのせかいのいきものがぼくとかのじょだけになってしまえばいいのに。そっとかのじょをだきしめようとするとかのじょはゆるゆるくびをふってもういちどくちをひらいた。「神様なんてきらいだいっきらい」どくん。いちどだけしんぞうがおおきなおとをたてた。ぼくはゆっくりとほほえんでかのじょにとう。「なぜうそをつくんだい?」かのじょはぼくをまっすぐみつめ、にこりともしないでいった。「嘘じゃないわ、本心よ」もういちどしんぞうがおおきなおとをたてる。どくん。うるさい、

「ねえ、」

なんだい、そういおうとしてこえがでないことにおどろいた。こんなことははじめてで、しんじられないことだった。なぜこえがでない?かのじょはぼくのへんじをまっているのかだまってぼくをみつめている。そのととのった、かんじょうがまったくでていないかおをみて、ぼくのこころはくるしくなる。ああ。こころなしかこきゅうまでくるしくなってほんとうにしんでしまいそうになって、それでもぼくはしにたくなくて、さんそをもとめてくちをひらいた。

「そんなことをいうと罰がくだるよ。だから、ね、いってごらん。
愛してるって、




美しき執着




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