どうしても欲しかった。
どうしても自分のものにしたかった。
欲しくて欲しくて、もう我慢すらできなくなって、そして彼女をさらった。

静かに眠る彼女を抱きしめたまま、ボクはその温かいぬくもりにうっとりとした。
目が覚めたら彼女はきっと泣くだろう。きっと、間違いなく。ボクじゃない誰かの名前を叫び助けを求め泣きわめきボクを拒絶するだろう。そんなことが簡単に予想できるのに、ボクはなぜ彼女をさらってきたのか。衝動に駆られたからだ。胸のしめつけが、息苦しさが、やわらぐと思ったからだ。

馬鹿なことをしたな

唐突に悟った。無駄なことをしてしまった。泣いたりしたらすぐさま殺してしまおう。生かしておくよりそのほうがずっと楽だ。そう考えたものの、手は動かない。これは、ボクに彼女が必要だということなのか。

彼女の右頬をゆっくりさわる。

傷つけないようにさわったつもりだったけど、爪がかすったのか彼女の頬に赤い線ができた。ぷっくりと血がうきでる。
ぺろりとなめてみた。甘い。なめたせいか、彼女が小さくうなった。もう起きるのかな。

やっぱり殺すのはやめよう。

草むらのなかにそっと彼女をおろす。今度は慎重に、彼女の頭にふれた。

目がさめたら、なんていおうか。そうだなあ。とりあえず、お嫁さんになってもらおう。



笑わない夜に会いましょう





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