どうしよう。

素直に脳内にうかんだ言葉。そして率直な心境。そして二番目にうかぶとしたら、「やばい」。それだけ。あとはなにもうかばない、思わない。心をおちつかせようと深呼吸してみる。ダメだ。全然ダメ。あいかわらず心臓ははやく脈うっている。

「条介、めずらしいね」

「なにが」

「今日すっごい静かにしてる」

そりゃいくら俺だって初めて彼女の家に来たら騒ぐ気なんてしないしむしろ迷惑にならないように極力静かにする。正直、緊張だってしてる。

「ねえ、さっきからなんでこっちみてくるの」

そう言って彼女は雑誌をめくる手をとめ、俺をみつめてくる。やめてくれなんでそこで俺をみる。彼女の短いスカートからのびる真っ白い足がパタパタとうごく。と、彼女はどこからともなくとりだしたポッキーを一口。ぽきっ。視線はいまだ俺にむけられている。そしてポッキーを一本食べおえてからまた一本とりだすと袋をこたつのうえにおいて一言。「食べる?」「…ああ」しぼりだすように声をだすと彼女は雑誌に目をもどした。俺はポッキーに手をのばして一本とりかじる。口の中はすでにカラカラにかわいてしまっているのにポッキーは追い打ちをかけるようにのこっていたほんのわずかな水分をも吸い取って口の中はたとえるなら砂漠、それはもうすごいことになってしまった。

「なあ、」

「なに?」

心臓がうるさい。どくどくと血が身体中をめぐる。のどがかわいてて水がとても飲みたいのにポッキーを食べ続ける、俺。

「その格好、さ、どうにかならないのか、」

あいかわらずうるさい心臓の音を聞きながら俺はすこしほっとして自分で自分をほめたくなった。彼女はまた俺をみつめて「は?」それから「これ?」と惜し気もなくさらしている太ももに手をあてた。するすると上下する手。そしてごくりと唾をのむ俺。これだから男はどうしようもない。

「あー、そういうこと」

「え、…は?」

ポッキーをはこぶ手をとめ彼女をみる。口があいたままなのを思いだしてすぐにとじると彼女がまるでそれを見計らったように口をひらいた。

「条介、やらしいー」

かあっと顔に熱があつまる。どっちがだ。理性とたたかってる俺の気持ちも考えてくれ。大きな心臓の鼓動を聞きながらまた俺はポッキーを口にはこんだ。


あー、どうしよう。




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