「ボンちゃん、はいってきなよー」

わたしがそういうと、バスルームのドアからすける影が動揺して揺れた。おもわず頬がゆるむ。はやくー。もう一度せかすと反響してバスルームにひびく声。とても心地がいい。
しばらくたって、やっとドアがひらいた。ようやくはいってきたとボンちゃんを見上げて驚く。赤くなった顔、落ち着きなく動く目、腰にきつくまいてあるタオルをそわそわと確認する左手。間違いなく照れている…!こんなにかわいいボンちゃん、はじめてみた!

「や、やっぱりあちし…」

「ここまできてやっぱやだとかダメだよ!」

ぎゅっとボンちゃんの腰に巻いてあるタオルのはじを掴んで引き止めるとボンちゃんは観念したのか、そろそろと浴槽のなかへ足をいれた。ぽちゃん。気持ちのいい音がして水面にたくさん浮いている泡たちがゆれる。そしてわたしの反対側にゆっくり肩までつかると、なみなみとはいっていたお湯が泡と一緒にあふれでた。ボンちゃんは相変わらずわたしから顔をそむけている。本当は浴槽にタオルをまいたままはいっちゃいけないんだよって教えたいけれど、そんなこといったらボンちゃんは出ていってしまいそうだからいわない。だけど、だけど、そのかわりにちょっとだけ、

「なっ、なによぅ…!」

するするとボンちゃんの隣に移動して、のけぞるボンちゃんの腰に腕をからめた。そしてそうっと腹筋をなでる。「っあ…!」でこぼこしていてすごくかたい、骨みたい。わたしは自分のお腹もさわってみる。…やわらかい。これが男と女の違いだろうか。あ、オカマと女の違い?

「…あんたねぃ、急にさわるんじゃないわよぅ!」

ボンちゃんの顔はみてないからわからないけれどきっと赤くなってる。…やっぱり一緒にお風呂はいるのはすごく嫌だったのかなあ、いまさらだけどそうおもってぎゅっと抱き着いてみた。途端に静かになるボンちゃん。ふと泡でかくれている自分のたいしてない胸を見下ろして、ため息がでた。きっとわたしに色気がないからボンちゃんは嫌々お風呂にはいったのよね。もっと胸が大きかったら…。きっと、毎日でも一緒にはいってくれるはず…。そうよね?


「あ、あちしもうでる!」






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