グラン様はとても美しいお方だ。髪の毛からつま先まで文句のつけようのない美しさ。そのお姿をみるだけでわたしはその美しさに魅了されてため息がでてしまう。なんて美しいのだろうかとクラクラしてしまう。それからあのお方の麗しいお顔を、髪を、身体を、頭の中で想像して胸を躍らせる。そしてそのあときまってなぜあのお方が女でないのかと落ち込むのだ。
あのお方が女であったなら。あのお方が女でなくても、せめてわたしが男であったなら。そうすれば落ち込むことなく、みじめな気持ちに苛まれることなく、そしていまよりもずっとあの方の近くにいれたかもしれない。性別の壁は分厚い。まったくもってうらめしい。

あぁ、一度でいいからあのベルベットのようになめらかな肌にふれてみたい。あの宝石のような瞳をずっと見続けていたい。でもそのようなことは絶対にない。美しくないわたしはあのお方の髪の毛一本にも触れてはいけないのだ。それにあのお方はきっとわたしの存在なんて知らない。知る必要もない。あのお方はジェネシス。わたしはジェミニ。たとえるならきらめく夜空の星と道端に生えている雑草。交わることのない平行線上の存在。




その瞳に取り憑きたい