ぐしゃぐしゃ、と | ナノ







ガチャリ
ドアノブを捻り中へと入る。「ただいまぁ」っと誰もいない室内へと響かせる。
この家に住むようになってからの癖だ。

返事なんか返って来ない室内の電気を点ければ俺はリビングに手荷物を置いてベットへダイブを決行した。


「…はぁ。」


多分、今日ほど学校に居た時間を長く感じたことはないだろうな。
いや、今のは少し言い過ぎだな。部活があった一年の時に比べれば、こんなの…
睡魔が頭を支配していく感覚に襲われながら、枕に顔を埋めゆっくりと瞼を閉じる。

完全に眠気に身を預けた、その時だ。
ピーンポーンと軽快なチャイムの音が部屋に鳴り響いた。


「今行きまーす…」


重たい身体をノロリと起こし、冷たい床に足を置く。
再びガチャリとドアノブを捻れば何かを持った幼馴染みがそこに居た。


「よう」


いつもの調子で挨拶をしてくる辺見に俺は大きな溜め息を吐いて中へと招いた。


「どうしたんだ?元気ないみたいだけど」

「いや、何もねーよ」

「ふーん。飯は?」

「まだ」


「なら、丁度良かったな。」そう言って辺見は手に持っていた袋からタッパーを出した。台所にある適当な茶碗にご飯を盛り、それをテーブルへと置く。
座って辺見の行動をじっと見つめる。
テキパキと動く辺見は部活後だというのに疲れが全く見えなく、むしろ生き生きしているように見えた。


「(まるで、母親。)」


ボーッとしていれば、まるで家族団らんのような食卓ができていた。
二人分だけど。


「ほら、手合わせろ」

「はいはい」

「せーの、いただきますっ」

「…いただきます。」


辺見が持ってきた野菜炒めに、いつの間にか作られていた具材が豆腐とワカメの味噌汁、そして少し多めに盛られたご飯。
広いテーブルで、たった二人で質素な食事をする。

辺見は週2のペースで俺の家で飯を食う。何を思ってかは解らないが幼い頃から続けられてることだから気にはしない。


「そういえば、郷谷。部活来なかったよな?体調悪いのか?」

「あ…いや。そのさ、辺見。」


改まった調子で言えば、辺見は疑問符を浮かべた。


「俺、部活止めたから」


向かいに座る辺見が酷く動揺してた気がした。






(お前なら解ってくれるって)

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