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「郷谷、何してんだ?」
「佐久間か、今から教室行くとこ。」
「遅刻?、だから練習のとき居なかったのか。」
「あー、それはちがくて…」
「レギュラー落とされないよう気を付けろよっ?」
ポンッと俺の肩を叩き、佐久間は走り去っていった。佐久間が少し遠い教室のドアを開けると同時に学校独特のチャイムが鳴り響いた。
やべ、俺教室あっちなんだっけ。
鳴り終わる前に教室の中に駆け込む。先生はまだ来ていないらしくクラスの奴等は「セーフ」と言って嬉々と笑う。
「一年間宜しくなー!」なんて言葉も飛び交い帝国学園の字に似合わず賑やかな奴等ばかりだなと思う。
「郷谷…。」
「んっ?あぁ、お前か」
後ろを振り向けば、サッカー部キャプテンの鬼道有人。零治先生のお気に入りと同じとは、俺もついてないね。
「何だよ」と少しヘラヘラと笑えばキャプテンの眉間にシワが寄る。
「何故、何も言わなかった」
「キャプテンに言わなきゃいけないなんて聞いたことないし?」
「総帥は認めていないはずだ」
「総帥大好きだなー。キャプテン」
周りから見たら俺と鬼道が睨み合ってるように見えるだろう。実際鬼道の眉間にはシワが寄っていて如何にも怒っているという表情だ。
声色も無意識に作っているであろう握り拳も、怒っているようにしか見えないのに。
「今日、放課後に練習がある」
そんな悲しそうな目、すんなよ
そう言い残せば鬼道は自席へと戻っていった。幸い席が俺より後ろだったから顔を見られる可能性なんて1ミクロもなかった。
今、すげぇ情けない顔してるかも
鬼道が自席へ戻った後、同じクラスになった土門や他の友達が俺の席へと群がってきた。
「なぁ、鬼道さん怒ってたみたいだけど…雅斗なんかしたのか?」
「そうかぁ?俺にはいつも通りのキャプテンに見えたね。」
「なら、別にいいんだけどさ」
そう他愛のない話をしていると、時針はどんどん右回りを進めていく。
秒針の進む音が煩わしく感じるようになり、担任が喋っている言葉なんて右から左へと流れていってしまった。
「(あとちょっとで終わりか。)」
ふと、そんなことを思えば終了を告げるチャイムが鳴り響いた。
ぞろぞろと椅子から立ち上がる音が何処からともなく聞こえて来れば号令が掛かり、皆「さようなら」と挨拶を述べた。
扉を出ようとした際に、黒いレンズと目があったが俺は逃げるようにその場を立ち去った。
(決心が揺らぎそうで)
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