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ひらひらと、
ピンクの花びらが風に乗っている。
俺は普段なら人がたくさん居るはずの駅のホームでふぁあっと大きな欠伸をして電車を待つ。
開いた携帯の画面には新着メール一件と書かれており、決定ボタンを2回押せば見慣れた名前とそいつの怒り顔を想像させる短い言葉が記されてあった。
* * * * * *
「郷谷!お前今何時だと思ってんだ?」
「えーっ…と10時15分くらい。時計に書いてあんじゃん、見えないわけ?」
「〜っ郷谷!!」
先生の大きな声が響いた瞬間、俺は肩を掴まれた。目の前に居る先生じゃなく、俺の後ろに居る誰かに。
ちっと舌打ちを漏らし俺の肩を掴む手を振り払おうと試みたが相手の顔が視界に入れば、俺は止まった。
「どうかしましたか?」
「…始業式そうそう郷谷が遅刻してきまして、それで…」
さっきまで威勢の良かった先生もこの人が来ると大人しくなるらしい。
それにしても、学園から恐れられサッカー部の監督を務めているコイツがこの教員室に来るなんて珍しい。
じーっと相手に穴が開くぐらいに睨む、そんな俺の視線に気付いたのかニヤリと笑みを溢せば口を開いた。
「…私が直接指導しましょう。」
「影山先生が、ですか?」
「何か困ることでも?」
「いえ、影山先生直々に指導して頂けるだなんて光栄です!なっ、郷谷?」
「馴れ馴れしいんだよ、タコッ!笑うな気色わりぃ!」
「郷谷、私に付いてきなさい。」
そう言って影山零治はくるりと俺に背中を見せた。教員室から出るときに「バーイバイ」と嫌味ったらしく言えばタコ野郎の顔が歪んだ。
暫く、影山零治の後ろを付いていけばグラウンドを一望出来る観客席へ着いた。
グラウンドでは我等が天下様の帝国イレブンが練習をしている。
「で、用は?」
どかりと観客席に座り影山零治を見上げる
遅刻指導を代わりになんて真っ赤な嘘で、影山零治はただ俺に伝えることがあるんだと解っていた。教員室にいたのも代わりに指導するなんて言い出したのも俺を呼び出す為。
そうだろ?っと笑って言えばアイツ等を見ろと言われた。目線を追って見れば帝国イレブンが駆け回る緑の広々としたグラウンド。
「……はっ…。」
「郷谷、言いたいことは解るな?」
「いやだね。」
座ったばかりの観客席から立ち上がる。イライラで自然と足取りが早くなる。
後ろで影山零治がニタリと笑ってる気がするから尚更イライラが増す。
「言っとくけどさー」
振り返れば、
ほぉら、うぜぇくらい笑ってらァ
「俺、零治先生の駒とかヤだから」
あんな馬鹿でクズの集まり、零治先生のお遊び道具だろ?
なーんで、アイツ等わかんねぇのかな。
(歪んだ2年の始まり)
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