文 | ナノ
不動×鬼道




2月14日、年に一度女が全力で愛を込める日。バレンタインデー。
だが、俺の場合は違った。いつものように練習が終わった後、不動にいきなり部室裏に呼び出され、話を切り出された。


「今日って、2月14日だよなァ」
「それがどうした」


相変わらずのニヒルな笑みを顔にベタリと貼り付けて、不動はクツクツと笑った。


「なんの日だか知ってるか?」
「不動(2、10)が死(4)ぬ日だ」


俺がそう言うと不動は表情をガラッと変えて、怒りを露わにした。
俺はふんっと鼻で嘲笑う。不動の言いたいことが見え見えだからだ。そんな不動が愛おしく見えてしまう俺は末期かもしれないな。


「素直に俺からチョコが欲しいと言えないのか?」
「…ッ、テメェ図ったな」


ピンポイントに不動が言いたいことを言えば、案の定不動は口元に手を当て、俺から目を反らした。顔からは羞恥の感情がありありと目に見えた。思わず顔がにやける。


「まあ、最近は逆チョコやら友チョコとやらもあるようだし、良いヤツを買ってきてあるぞ。円堂たちにもあげたしな」


フンッと得意気にそう言えば、不動は一瞬目を見開いてから、眉をひそめて俺に顔をずいっと近付けた。


「な…、なんだ…?」


不意をつかれたいきなりの至近距離に、思わずたじろぐ。
不動は俺の様子を見て笑うのかと思えば、眉をひそめたまま俺の鼻を摘んだ。


「ッた…、なにす」
「俺は鬼道ちゃんが作ったのが欲しいんだよ!」


俺の言葉を遮り、不動が強めに言い放った。言った後にえらく後悔したらしく、またぶいっと顔を背けた。でも不動の真っ赤な顔は後ろ姿からでも伺えて、つられて赤面してしまう。


「やはり不動は馬鹿だな」
「なんだと…ッ!?」


また怒りながら振り向いた愛おしい唇に甘くそっと口付ければ、不動は一瞬目を見開いてから、俺の後頭部を押さえて深く口付けをした。
しばらく舌を絡めて互いの愛を確かめ合うようにキスをして、不動から唇を離してぼそりと呟いた。


「…やられた」
「フッ、俺の方が一枚上手だったようだな」


腕組みをして誇らしげに鼻で笑えば、「バーカ」という不動の声と共に、また深く深く口付けた。


「ホワイトデーは三倍返しだぞ」
「ああ、楽しみにしてろよ」



鹿
(苦いチョコと、甘いキスでいいだろう)

fin.


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ハッピーバレンタインっ♪
不動がヘタレにしか見えないw


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