文 | ナノ
影山チルドレン
ふと、時計を見れば1時を指していた。
太陽がちょうど頂点を過ぎた頃、俺は自室を出て今では少し小さく見えるようになった玄関へと向かった。
扉を開け玄関の前で止まっている車に乗り込む。運転手も中に乗り込めばエンジンを掛けて空港へと向かった。
「(10年…か。)」
長いか短いか。
彼らと会わなかった期間を思い出す。
高校へ行って、大学へ行って、そして今は鬼道財閥を継いで忙しい日々。
俺はサッカーとは無縁になってしまったが、円堂や壁山は未だにプロという形でサッカーに関わっている。
今日会う人達もその内の一人…。
「「キドウッ!」」
車から降りたと同時に俺を呼ぶ声がして俺は柄にもない笑顔で迎えた。
ようこそっと言う意味を込めて、握手をして軽く抱きしめた。
「フィディオ、デモーニオ、久しぶり」
「またキドウに会えて嬉しいよ!」
「あぁ、俺もだ。」
「本当に久しぶりだね。FFIの時より美人になってたから驚いたよ」
「女じゃないんだ、そういう冗談は止してくれ」
苦笑をして、そう言うと「どうぞ」っと車に乗り込むよう促した。「ジョークじゃないんだけどな」なんて笑いながら言えばフィディオは車の中へと乗り込んだ。
「デモーニオ?」
「キドウが真ん中に座ってよっ」
「…別に構わないが?」
特に意味があるのかどうか解らないデモーニオの言葉に従って、俺達三人は車の中へと乗り込んだ。
目的地へと向かう途中、車内では懐かしむように昔のコトを話したり、今自分達の現状など…話題は全然尽きなくて、言葉と笑い声が溢れた。
暫くして、車がブレーキをかけて止まった
着きましたよと運転手が告げれば、ガチャリと扉が開く。
毎年一度ここに訪れるようになってから10年も経ち、あの人への感謝の気持ちは年々大きくなるばかり。
「…酷い話だ。」
そう呟いた言葉は、後ろでキャッキャッと騒いでいるフィディオ達の声に掻き消された
ここを右だっと曲がろうとして視線を向ければ、知ったような顔をした男達が墓の前で手を合わせていた。
俺の気配に気付いたようで、ゆっくりと此方に視線を滑らせる。
二人の男がこちらを向いた時、俺は緩んだ口元を隠せず「ふっ」と鼻で笑うように見せた。
「よォ」
「やぁ、葬儀以来だね」
「久しぶり、不動、アフロディ。」
「変わらないね〜」握手をしたり、軽く会釈をするなど表現の仕方は一人一人違うが、一通りの挨拶を終えると後から来た俺達三人は白い菊の花を供えてお祈りをするように手を合わせた。
「(毎年来ているはずなのに、なんだか変な感じがするな…)」
5人全員が集まることなど、あまりない為(葬式の時に顔を会わせたぐらいだ)少し、
いや、とても気まずい。
「オイ、鬼道クンなげぇよ」
笑いが含まれているであろうその声によって思考の中から現実へと引き戻される。
「すまない」と苦笑い気味に謝まり立ち上がれば、自然と恩師の墓を囲む形となっていた。
「運命、だったのかもね」
アフロディが静かな口調で、そう言った。
「はァ?」と不動が野次を飛ばすとフィディオの声が僅かに重なる。
「俺達と、監督の出会いがってこと?」
デモーニオは疑問符を浮かべたまま黙り込み、俺はアフロディの言葉を待った。
「それだけじゃないよ。今、僕達が此処に集まったことや総帥が死んでしまったこと、全てが運命なんじゃないかなっ…てね」
「ふーん…」
「んな訳ねーよ。偶然だろ、偶然。」
「でも、本当にこれが運命だったら面白いよね」
全てが運命であって、必然だった。
そんなことは、もうどうでもいい。俺達は恩師を思って此処へと集まった。
そう、それだけでいいんだ。
くすりと笑えば皆が不思議そうな顔をして、俺を見る。
「久しぶりにサッカーがしたい」
その一言に皆は笑顔で頷いた。
サッカーしようぜ!
(貴方が教えてくれたサッカーで)
fin..
――――――
もこも様
10000hit記念のフリリク企画に参加して下さり誠に有難うございます(´`*)
気に入って頂けると嬉しいのですが、気に入らなかった場合返品・書き直し受け付けてます。
ほのぼのとした続きを書く予定でありますので、そちらとセットで((
ホントに有難うございましたっ!