鬼受け
総帥が亡くなったと知って一日がたった今日監督は俺を気遣ってくれたのか練習を休みにしてくれた。
わざわざ休みにしてくれたんだ、心配もこれ以上掛けたくない。
俺は朝から私室に篭り何をする訳でもなく、サッカーボールを綺麗にしたり、勉強をしていた。
ある程度勉強に集中し始めて何分かが経った頃、静かだった俺の私室にノックの音が舞い込んだ。
ドアノブをひねり、ドアを開けば、見慣れたジャージ姿とは違い、シンプルに纏められた私服を着た佐久間がすこし俯きあたふたとしていた。
「どうした?佐久間」
視線が会えば佐久間は顔を赤くし、目線を泳がせ後ろに回した腕を俺の前に持ってきた。
「これは?」
「映画のチケットだ、その、良ければだな一緒に…」
「あれ?鬼道に佐久間じゃないか」
廊下の曲がり角から現れたのは風丸だった。これまた風丸も佐久間同様に私服に着替えており、何処かに行くのかと思った。
「あ、鬼道良ければ一緒に映画に行かないか?」
がさりとポケットから風丸が出した映画のチケットは、案の定佐久間の映画のチケットと被っており、俺はお互いのチケットを見合っている二人にくすりと笑い声を漏らした。
「よォ、お二人さん、なに鬼道クンにたかってんだァ?」
「不動、お前も俺を映画に誘いに来たのか?」
なんとなくもう展開は読めてきた。私服に着替えた不動。不動もまた俺を映画に誘いに来たのだろうか?
「誘いにって、お前から今日行こうって言ってきたんだろ」
不動の言葉に少しばかり驚く。
確かに、いつだったか大広間で寛ぎテレビを見ていたとき、ふと映画のCMを見て、それが見たいと言ったら不動が
「見に行けば良いじゃねぇか」
と言ってきて、一人で見に行くのもあれだからと不動を誘ったのだった。
「確かに誘ったな…」
「だろ?なら鬼道クンは俺と映画に行くんだよ」
にたりと不敵に笑った不動が俺の肩を引き寄せた。佐久間が怒りを顕わにしていたが不動も言い返していた。
「なら、皆で」
俺が『見に行けば』と続けようとしたら廊下の奥から円堂の声が聞こえた。
「鬼道!映画見に行こうぜ!」円堂が二枚のチケットを持った腕をぶんぶんと揺らしながら走り、そして慌ただしく俺の前に止まった。
「みんな映画か、」
「豪炎寺か、何時から居たんだ」
「さっきだ、俺もお前を映画に誘いに来たんだが」
二枚のチケットを持った豪炎寺が苦笑を漏らし肩を落とした。
皆が皆、俺が見たかった映画のチケットを持って此処に来たのがあまりにも可笑しく、とうとう堪え切れなくなった笑い声が口から零れた。
「良かった、やっと笑ってくれた」
風丸が俺の頭を優しく撫でた。
「皆心配してたんだぞ?」
佐久間も安心してくれたのか自然と笑顔になっていた。
「じゃあ、とりあえず鬼道クンは俺と映画に行こうぜェ?」
「鬼道さんは俺と行くんだ!」
「いや、鬼道、俺と行こうぜ?」
「鬼道は俺と行くんだ!キャプテン命令だからな!」
不動、佐久間、風丸、円堂が言い合ってる中、豪炎寺が俺の手を引いた。
「今のうちに、二人で行こう」
豪炎寺に手を引かれ歩きだす。少しだけ上にある豪炎寺の顔を見れば何時もの無表情と違い笑顔だった。
「豪炎寺!狡いぞ!」
円堂の声が少し遠くで聞こえると同時に複数の足音が慌ただしく聞こえた。
「鬼道、走るか」
「ふっ、……そうだな」
円堂達に追いつかれる頃にはもう俺は吹っ切れていた。
優しさが嬉しくて(仲間が支えてくれるから、前を見る)
fin.
――――――
遅くなってしまい本当にすいません!
私には少し難易度が高かったようで…
気に入って頂けると嬉しいのですが、気に入らなかった場合返品・書き直し受け付けてます。
相互、誠に有難うございます(´`*)
これからもよろしくお願いしますね^^
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