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もう、春なんですね。



春一番とはこういうことか、と思った。
もう季節は春上旬。暖かい日が続いていた為、てっきり今日も暖かいと思っていた。図書館での用を済ませ、外に出れば強い風が俺の髪を揺らした。あまりの寒さに背筋が震えて急いでコートのボタンを閉める。もう少し重ね着してくれば良かったなんて今更思っても遅い。


「さむ…っ」


歩き始めるといきなり目の前が赤になって、何かごわごわした毛の感触が顔面にあった。顔にあるごわごわをズリ下ろして後ろを振り返る。


「やはりお前か、不動」
「ちっ、バレてたか」


俺の首には赤いマフラーが掛かっていて、両端を不動がニコニコしながら持っていた。今、完璧に主導権は不動にある。
やられる。やらなきゃ、やられる。そう思った俺は隙を見計らい、首から外そうとマフラーに手をかけた。瞬間、ぐんっと横に引っ張られて不動に一歩近寄った。


「逃げられるとでも思ったか?」
「…っぐ、」


一瞬気管を潰され軽く噎せ返す。不動のニコニコ顔は崩れない。むしろ一層愉しそうに輝きを増している。そんな不動の様子を見て、俺の額に冷や汗が伝った。

「何の用だ、不動」
「ハッ、用が無けりゃ話しかけちゃいけないってか?」
「なん…っ」


不動に向き合えば、またマフラーを引っ張られて、今度は鼻先が触れるくらいの近さになった。いきなりの至近距離に顔が火照り始める。目の前には不動の喉仏と、額にざらりとした生暖かい感触。


「ひっ!」
「しょっぺぇ、」


予想外過ぎる行動に思わず座り込む。舐められたであろう額を押さえながら不動を見れば、勝ち誇ったような得意気な表情を浮かべ、クツクツと喉で笑った。


「な、な、何するんだ、お前は…っ!」


腰が抜けてしまった為、斜め下から不動を睨み付ける。驚愕と羞恥で俺の顔は真っ赤だろう。また不適に笑われるんだろうと思った矢先、不動の表情を見れば、俺と等しく真っ赤だった。


「なっ、」
「あー、クソ…っ」


予想外の連発に頭が混乱する。不動は無い後頭部をガシガシと掻きながら、下を向いた。眉間に皺が寄っているが、その表情は言動と真逆で、怒っているというよりはむしろ…


「何故、照れてるんだ…?」


俺がそう聞けば、不動の顔は更に赤くなっていって、いきなりしゃがんで俺の額にキスを落とした。


「ちょっ、不動…!」


次は眉間、そして鼻先。言葉を紡ぐ余裕もないくらい不動は啄むような甘いキスをいくつも落とした。


「なあ、鬼道ちゃん、」
「な…んだ…」
「好きだよ」


次の瞬間には目の前いっぱいに不動の整った顔。思ってたより長い睫毛を見ていたら不動の目が一瞬開いてまた閉じた。


「目、瞑れよ」
「……ああ、」


いつの間に、春一番はどこへ行ったのやら。心地いい風が吹き、淡い桃色の桜を咲かす枝垂れ桜の木が俺たちを隠してくれていた。





ね。
(暖かな春と恋心は比例するのです)

「不動、マフラー忘れてるぞ」
「それは入学祝だ。とっとけよ」
「ああ。なら、お返しだ」
ちゅっ。
「……んなっ…!?」
「大事にとっとけよ」


fin.
<お題⇒ひよこ屋様>




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イナズマイレブン、終わってしまいましたね。私的には良いラストだったんじゃないかと思います。円堂のあの言葉で始まり。そして、終わり。素敵な作品でした。これからも変わらず愛し続けます。それから、イナズマイレブンGOが始まりますね。もう良さげなキャラは目つけてたりしますが(笑)とりあえず連載を終わらせねば、と思います。これからも管理人共々、白月を見守って下されば幸いです。
2011/04/27 虎鉄貴

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