coupling | ナノ
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※年齢操作→幼少鬼道



チュンチュンチュン。
鳥のさえずりが響いた。


「あー…。今何時だ?」


時計を掴んで見れば針は時針秒針ともに6を指していた。


「(やべ、あと30分か)」


7時には食堂に集まり朝食を取ることになっている。
8時からは準備運動が開始される。
まぁ、7時から7時半までに食堂に行けば良いんだけれど。


「(今日はそうも行かねぇだろ)」


不動は心の中で呟けば、隣に居る恋人を起こそうと体を反転させる。


「おい、鬼道ちゃ…ん?」


同じ高さにある筈の肩が低いように感じた
ガシッと肩を掴んで見れば、それは確かに低く小さくなっていることが解った。

勢いよく上半身を起こすと、隣にいるはずの同年代の彼が一回り小さくなっていた。


「嘘…、だろ?」


瞬きを何回しても、目を擦っても、目の前にいる彼は鬼道有人だし、元に戻ったりはしない。


「まさか、俺の子を産んだとか…」


サーッと血が引いていく感覚が不動を襲う
だが、すぐに「ま、それはありえねぇよな…遠い夢だ」なんて呟いて考えを消去した。

不動は目の前に居る子供を起こす為に軽く二三回叩くと、子供の瞳がうっすらと開いた。

「ん…おにぃさん、だぁれ?」


高い声で問われた。
その目の前に居る子供は、長い睫毛に紅い瞳、茶髪のドレッドヘアーを一つにまとめ、容姿は正しく鬼道有人であった。

でも、声と身体は全然違う。


「お前…、鬼道ちゃん?」


いつもの愛称で呼んでみれば、子供の表情には疑問符が浮かぶ。


「おれは鬼道有人!…おんなのこじゃないから鬼道ちゃんではないぞ」

「マジで鬼道ちゃんかよ…」

「だから、おれはおんなのこじゃない!」

「あーはいはい、鬼道ちゃん。」


目の前にいる子供は、不動の予想していた通りの人物で何故こうなっているかはよく解らないが、とりあえず喚く小さな鬼道を放っといて不動はユニフォームに着替えることにした。


「あ、おにぃさんの名前は?」

「不動明王」

「じゃあ、ふどうさん。ここはどこ?」

「お前の知らないとこ。」


着替え終わると不動は手を差し伸べる。
「行くぞ」なんて急かせば幼少鬼道(以下:鬼道)は疑うような眼差しで問う。


「ゆうかいとかだったらつうほう…」

「あほか!手要らないなら先行くぞ」

「あ、まって!」


小さな足で不動の横をテッテッテと小走りで付いていく鬼道を見て「ちっ」と舌打ちを漏らせば軽々と鬼道を抱き上げる。


「じぶんであるけるっ!」

「こっちの方が危なくねェだろォ?」

「…ふどうさんは総帥とにている」


影山零治と似てる。
くすりと笑いを含んだ声でそう言われた不動は鼻で笑うと「嬉しくないね」と言い放った。
そう言えば鬼道は「総帥はいいひとなんだ!」っと熱心に語り始めた。


「(お前を狂わせたのはアイツなのに)」


そんなことを思いながら鬼道の話しを聞き流せば食堂へと着いた。


風「不、動?…その子は何だ?」

「あー、ちっこくなった鬼道ちゃん」

秋「え、鬼道くんなの?」


ゆっくりと下に下ろせば、鬼道は皆を見上げる形になる。
異常現象が起きて小さくなった鬼道にすぐに人が群がり集まる。


「6さい、鬼道有人だ!」

風「あはは、可愛いなぁ」

壁「あっ小さい鬼道さんが居るッス」

春「えぇ?!お兄ちゃん?」


更に起きるのが遅いヤツ等まで食堂に集まってくれば更に騒がしくなった。


円「お、何だ?新しいメンバーか?」

豪「そんな訳ないだろう。」

風「鬼道らしいぞ?」

佐「鬼道おお!ハァハァ」

「てめェは近づくな」

佐「何故、貴様にそう言われなければいけないんだっ!」


ギャアギャアと日常と化してきている佐久間との口喧嘩の間に鬼道が割り込んできた。


「ふどうさんっ、おんなのこには優しくしなきゃだめだよ!」

「…ぷっ、あはははは!」


笑った。マジ大爆笑。
佐久間を女の子と見間違える鬼道が面白すぎて面白すぎて、それにショックを受ける佐久間が哀れで滑稽すぎて。

何で俺が怒って居るのか理解できない鬼道は困惑した表情で俺を見つめた。


「…くくっ…お前コイツは男だよ」

「本当?!…ご、ごめんなさい」

佐「き、鬼道…」


これには佐久間も相当ショックだったようで絶句していた。
佐久間に女顔というのは禁句に近い、しかも幼くなった鬼道とは言え信頼していた奴に間違えられたんだ。
マジ、可哀想だと思う。


「ほら、座れっ」


笑いを堪えながら座れと促せば、鬼道は何回も佐久間に謝ってから椅子に座った。

幼いからか、飯を上手く口に運べないようで米粒が頬に付いていたり、ボロボロとオカズを落としたり。


「(これが鬼道財閥の坊っちゃんとは思えねーな…。)」


苦笑いを浮かべながら口周りをハンカチで拭ってやれば満面の笑みで感謝された。
コイツの笑顔が酷く俺の心に突き刺さるのは気のせいだと信じたい。




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(アイツが笑ってるのって見たことあったっけ?)




fin






――――――
結構前に書いた突発ネタっす
続くような感じだが続かない
タイトルは思い付かなかったんでw
ホントはlog行きの文(笑)

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