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寂しい時はそばにいたい。



「桜散り始めちゃったね」
「もう、俺等も高校生か…」


春休み、僕は半田を誘って町に繰り出した。高校は別になってしまうから思い出作りみたいな感じで、なんて誘えば半田は軽くOKをくれた。


「半田のとこは入学式いつだっけ?」
「えーと、明明後日だったかな」
「そっか、」


桜並木を歩きながら空を見上げる。数日前は満開だった桜はだいぶ散ってしまって、見事な葉桜になってしまっていた。
並木道の脇にある浅い川に目をやれば、散った桜が絨毯のように水面に浮いていた。淡い桃色の綺麗な絨毯だった。


「ねえ、乗れそうじゃない?」
「なに言ってんだよ。濡れるぞ」


川縁で浮いている桜の絨毯をつつく。すっかり春の気温になってしまった今じゃ、川の水でさえ生温くてなんだ気持ち悪く感じた。
「それにしても綺麗だな」ってふわりと笑う半田の方が僕にとっては綺麗だなんてそんなクサい台詞は絶対言ってやらないんだけど。


「だね、」
「ちぇっ。なんだよ、つれないな」
「ははっ、なにそれ」


相槌を打ちながら立ち上がり、指先についた水をピッピッとはらう。僕のそんな様子を見て、半田は舌打ちをしながら肩を落とした。なんだか面白くて笑えば、半田もつられて笑い出す。
二人で笑ってると不意に風が吹いた。僕を風下にして、風。風。風。予想外の強風に風上にいた半田がぐらついた。思わず両手を差し伸ばせば、ポスンという音がつくように僕の腕の中に暖かい感触。


「僕、学校離れて半田に会えないとか嫌だよ」


これが本音。目頭が熱くなって声が上擦った。変な口実で誘ったのも、思わず手を差し伸ばしたのも、半田ともう会えないんじゃないかっていう恐怖感からだった。
半田の頭に顔を埋めると、クスッという笑い声が聞こえた。


「なっ、笑って…」
「馬鹿だなあ。同じ雷門町にいるんだから、いつでも会えるだろ」


半田の顔を見れば、笑っていた。泣きながら。


「花びらついてるよ」


半田の涙を拭いながら、おでこについている桜の花びらを取って額にキスを落とした。






(一人は好きじゃないから)


fin.



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