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別れ間際の両思い。



そのままのお前を愛しているから。
離れている時も想いは変わらない。


「不動、鬼道や佐久間達と頑張れよ」


泣き顔なんて見せられなくて引きつった笑顔を見せれば、不動は心配そうに顔を歪ませた。


「俺、お前を残して行けねェよ」
「そんなこと言うな。お前は進むべきなんだ」


俺の目を直視出来ないのか、不動は泣きそうな顔で目をそらした。
不動は俺との別れで一度も笑わなかった。さよならも言わなかった。俺は怖くて送りに行けなかった。


「泣かないって決めたのにな…」


不動やみんなが行ってしまう日、練習後の部室に1人で残っていたら涙が出て来た。呆れながら溜め息をついてベンチに座る。熱くなってきた目頭を指で摘むように押さえながら俯いた。


「俺はここに居ていいのか…?」


この胸の真ん中にぽっかり開いた穴の塞ぎ方がわからない。不動への想いが消えてくれない。果たして、俺だけがこんなにも恋い焦がれていたのか。不動のあの時の表情は本物だったのだろうか。


「今からでも、間に合うかもしれない」


不意に確かめたくなって、最後にもう一度だけあの温もりが恋しくなって、はたと立ち上がり部室から出ようとした。扉を開けようとノブに触る前にノブがくるっと回って扉が開いた。いきなりのことで思わず尻餅をついた。


「!?」
「ハァ…ハァ…ッ」


信じられなかった。目の前には、汗だくになりながら息を切らしている不動がいた。


「ふ、ど…」


不動の名を呼ぶと、不動は荒い息遣いのまま、驚きのあまり尻餅をついた俺の上に跨って口付けをしてきた。


「ふぅ…んッ」


無理矢理不動の胸板を押して離れさせる。元々俺の方が力はあるし、走って来て弱っている不動を引き離すのは容易いことだった。


「源田、俺…」
「不動、いいんだ。行ってらっしゃい」
「出来ることなら、いっそ連れ去りたい…ッ!」


俺が笑いながら不動にそっと別れを告げると、不動は大粒の涙をボロボロこぼしながら俺の後頭部を掴んで強く抱き締めた。俺も汗塗れの不動を抱き締めた。愛おしくて、愛おしくて、涙が出た。不動の気持ちが本物だと知れて酷く安堵した。


「……ありがとう」




(遠くからいつも応援してるから)



fin.

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