coupling | ナノ
気付かなかった哀れな道化。

※微裏注意
※ヤンデレ不動



佐久間や鬼道と楽しそうに話しているお前の姿を見て、無性に苛ついた。
俺と源田はセックスするだけの関係。源田は佐久間が好きだ。そんなことはこの関係をもつ前に分かっていたことなのに、いつの間にやら強い独占欲が生まれていた。


「不動、今日、なんか違ッ…あッ」


事情中もその気持ちばかりが表に出てしまう。今日は俺といるより嬉そうな源田を見てしまったから、自然と行為も棘があったようだ。


「どうしてだろうなァ?当ててみろよ」
「んッ…、なんか、怒って…る?」


一発で暴かれて動いていた手が止まる。なんで分かるんだよ…。


「お前…楽しそうだったよなァ」
「くッ、痛…ッ」


徐々に硬くなってきていた源田のソレを強く握る。思わず力んで爪を立てた。


「あぅ、ひ…ッ、ぎぁああ″あ″…!」


源田が悲鳴に似た喘ぎ声を出した。それが変なくらい可笑しくて俺は片方の口角をぐいっと上げて鼻で笑った。


「あ″あ″あ″ッ、」
「そうやって俺とヤってるにも関わらず、佐久間と俺を重ねるんだろ」
「ひあ″!違ッ、ふ、不ど…ッ」


源田は俺の下で涙を流していた。痛みと快楽からくる涙だろう。実はMだったりするのか。まあ、そんな今にもイっちゃいそうな泣き顔がそそるんだけど。


「ほら、言えよ!『佐久間大好き〜』ってよ!!あひゃひゃひゃッ」
「俺は、」
「俺は?」


顔が無意識ににやけた。源田の焦った顔、泣いた顔、イった顔、全部が愛おしい。


「俺は…お前が、あ゛!好き…だッ」
「…………は?」


思わず素っ頓狂な声が漏れた。と同時に手も止まった。手だけじゃない、思考も。俺の頭に大きな疑問符が浮かんだ。


「お前、佐久間が…」
「…ッ違う」


源田は唯、「違う」と否定ばかりを呟いて、固く目を瞑り首を横に振った。


「…俺が好きなのはお前だ。不動…」
「な、んだよ。お前は佐久間が…」
「好きだ、不動」


源田の言葉が俺の頭ん中をぐるぐると巡る。好きだ、不動、違う、俺じゃない、佐久間が…ッ。
目眩がして吐き気が襲ってきた。胃酸が逆流してきて、なんとも言えない臭いが鼻を通った。


「うっぐ…ッ」
「不動!大丈夫か!」


俺の肩をそっと抱いた源田の手を思いっきりはじいた。
源田の肩が、びくりと震えたのが分かった。


「触るなッ」


意を決して飲み込むと、喉がゴクリと鳴った。気持ち悪いどころの話ではない。飲み込んだにも関わらず胃酸の混じった涎が唇の端から垂れた。呼吸が荒くなる。
次の瞬間優しい温もりが俺を包んだ。源田の胸板は固いような柔らかいような、もたれ掛かると丁度良い案配だった。無言の源田がまた俺の心を乱す。なんか言えよ。


「なぁ、俺のことが好きなんだろ?なら接吻くらいしてみせろよ」


ワザと挑発するように口角を吊り上げてニヒルな笑みを浮かべる。どうせ出来ないのに皮肉なものだ。
寄りかかっていた源田の喉が鳴ったのが分かった。源田の唇と俺のソレが重なったのに気付くのは一瞬だった。わざわざ俺が垂らしていた涎も舌ですくってそのまま口付けをする。


「ふっ…んんッ」


入ってきた源田の舌を噛んで、引っ込んだところをまた絡ませた。優しく激しく、まるで宝物に触れるみたいに。鈍い鉄の味が口に広がる。源田の鮮血は俺と源田自身の前歯を淡く染め上げた。


「…ふぁ」


唇を離すと透明な赤い糸が出てきた。数秒間綺麗な赤い糸を見てから源田を見直して、また唇を重ねる。源田も待っていたようで、自然と目を瞑っていた。
兎に角、もうグチャグチャに犯してやりたかった。俺の心は歓喜と欲望と独占欲で支配されていた。理性なんて勿論バイバイだ。


「源田…、」
「不、動…。早く…」


源田の頬にうっすらと残る涙の跡を舌で辿ってから、源田を抱いた。





(お前も俺を見てくれていたんだな)



fin.

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