coupling | ナノ
たまには仕返ししてみたり。
休憩時間。用を足してトイレから出ようとしたら、個室から伸びてきた手に凄い力で腕を掴まれ、中に引っ張り込まれた。
「マックス!?」
引っ張ったのはマックスだった。なんだか少しやつれているようにも見えた。
「ダメ、もう限界…」
「どうしたんだよ?」
「……半田が足りない」
マックスはそう言うと、いきなりキスをしてきた。ちゅっちゅっ、と何度もキスをされる。
「やっぱり半田は可愛いね」
「ちょ、やめ…ッ」
ふたをした便座の上に倒された俺は、ただ降り注ぐマックスのキスに酔いしれていた。
「やなの?じゃあ、やめるよ」
マックスが凄く悲しそうな顔で俺の上から退くから、思わず本音が出た。
「やじゃない!マックスのキス…好きだ…もん…」
言ってから後悔した。目の前でしゅんとしていたはずのマックスがニタリと笑った。
「じゃあ、沢山してあげるよ」
次の瞬間噛みつくように口を塞がれた。固く結んだ俺の唇にねじ込むように舌を入れて口内を犯された。前歯をなぞって、上顎をなぞって、舌に絡みついてくる。
「ふあっ、んん…ッ」
唇を話すと可愛いリップ音と卑猥な銀糸が現れた。口を腕でごしごしと拭う。きっと俺の顔は火が出るくらい真っ赤だろう。いくら空気を吸っても酸素が足りなくて大きく肩を上下して呼吸をする。
マックスは愉快そうに笑った。
「ハァ…ハァ…ッ」
マックスが俺の首筋に顔を埋めたかと思えばいきなりチクリと痛みが走った。
「なに…を…」
「キスマーク」
マックスはそう言って舌を出して笑った。と同時に休憩時間終了のホイッスルが鳴った。
「じゃ、行こうか」
「人の首にキスマークつけといてそんな軽く言うなよ!」と心の中で思いながらキスマークがあろうところを撫でる。
「マックス…!」
トイレから出ようとするマックスの襟を掴んで、首に噛みついた。
「…ッ!?何のつもり?」
「キッ、キキ、キスマークッ!!」
一瞬驚いた顔をしながら首筋に手をあててフッ、と笑ったマックスに、指をさして言い放ってから、走り去った。
「ハハッ、これじゃ歯形だよ」
たまには仕返ししてみたり。
(それは独占欲の可愛い仕返し)
fin.
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