coupling | ナノ
この気持ちは止められない。




「なあ、源田。鬼道さんってさ、俺のこと好きなんだと思うんだよね」


昼休み、いきなり佐久間が俺の机まで来て語り始めた。もう慣れっこなんだがな。


「(…またか)はいはい、そーかもね」


適当にあしらえば、ムスッと頬を膨らませて俺の頭にチョップをかました。


「適当に言うなよ!でさ、鬼道さんに愛の歌を捧げようと思って」
「なんだソレ。お前は唐突すぎると思うぞ」
「うるさいよ!見てみて、じゃーん!」


佐久間が胸ポケットから取り出したのは小さく折り畳まれた紙。否、楽譜だった。


「結構本格的だな。佐久間が作ったのか?」
「ああ、作詞は俺だよ。作曲は成神だけど。なんか成神、楽譜くれる時泣いてた」
「な、成神に謝りにいけ!!」


その後、残りの昼休みずっと源田から説教を食らった。母親かよ。


「早く鬼道さんに会いたいなぁ」


学校の終わりのチャイムが鳴ると、俺は源田の襟を引っ張り勢いよく教室の扉を開けて部室へと向かった。


「なんで俺も連れて行くんだよ」
「いいじゃん、俺達友達じゃん」溜め息をつきながら佐久間の顔を見ると、プーと頬を膨らませてからニカッと笑ってそう言った。
また溜め息をついた。コイツは俺に溜め息をつかせる天才だ。


「あ、いたいた!鬼道さぁーん!」


佐久間がぶんちょぶんちょと手を振る。鬼道がその様子を見てあからさまに嫌そうに顔を歪ませた。でも佐久間はそんなのお構いなしだ。


「ねえねえ、聴いてよ鬼道さん!」
「(…うっ)佐久間か。何をだ?」
「俺から鬼道さんにプレゼントがあるんだ」


佐久間は目をキラキラと輝かせて鬼道に食らいついた。鬼道はといえば、こめかみにうっすらと青筋をたてている。


「ほぉ、プレゼントか」


佐久間は鬼道の「どんなのだ?」という言葉を待っているかのように、子犬のように鬼道を見つめ、尻尾を振っている。
鬼道は佐久間の隣にいた俺を見た。俺が溜め息をついて頭を振ると、鬼道は頭を垂れた。どうやら降参したらしい。


「どんなのだ?」
「じゃじゃーん!!」


さっき見せられた楽譜を鬼道のゴーグルすれすれに突き出した。鬼道は頭上に?を浮かべている。
佐久間はコホンとわざとらしい咳払いをひとつして目を瞑った。


「それでは聴いて下さい。"鬼道さんForever"」
「待て待て待て」


歌う気満々の佐久間に鬼道がストップを入れた。佐久間は頬を膨らませて「なんだよー」と言いながら鬼道のドレッドを引っ張った。


「なんだ、鬼道さんForeverって。なんだ、鬼道永遠って格好いいなおい」
「鬼道、キャラ壊れてるぞ」
「コホンッ…。あのな、佐久間、」


鬼道に一言注意を入れて、佐久間を見ると大変なことになっていた。


「鬼道さんが止めたのは恥ずかしかったからに違いない。鬼道さんは照れ屋なんだからハァハァ。恥ずかしがり屋なんだからハァハァ。可愛いなぁ、全くもうっハァハァ」
「お、おい、佐久間…?」


鬼道が発狂している佐久間に近付くと、佐久間が鬼道の両肩をガシッと掴んだ。
ヤベェ、目がマジだよ。鬼道逃げて、お願いだから逃げて。


「鬼道さんハァハァ、俺この気持ちどうしたらいい?」
「知るか」


鬼道は変態化した佐久間のドン引き発言をサラリと交わし、赤マントを翻して総帥のところに向かった。
鬼道の後ろ姿を見ながら佐久間が言った。


「どうしよう…俺、全身の毛穴からペンギンが出そうだハァハァ」
「佐久間、キモいぞ」
「知ってる」




この気持ちは止められない。
(照れ屋なアナタが大好きです)



fin.

[ 27/33 ]

[*prev] [next#]
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -