07-1 「ちょっと、青汰くん、聞いてるぅ?」 薄暗い部屋、甘ったるい声、直に感じる体温。なんだか集中出来なかった。 『あ、すみません。何か言いました?』 「だからぁ、そこじゃないって…んっ」 意識を戻して突き直せば、女はまた喘ぎながらよがった。 女は絶頂を迎えてから暫く横たわった後、煙草を吸い始めた。独特な臭いが鼻につく。少し不快。 「今日、調子悪くない?」 『あー、ちょっとあって…』 「ふぅーん…」 言葉を濁せば女は煙草の火を消して、俺に跨ってきた。 『…どうしたんスか』 「ふふ、わかってるくせに」 段々と近付いて来る顔に多少の嫌悪感を覚えながらキスをする。絡まる舌とか、流れてくる唾液とか、たまに当たる歯をこんなに嫌に感じたのは初めてだった。女の舌に開いたピアスが変に気持ち悪くて口を離す。 「なに?」 少し怒った口調で問うてきた。言葉に詰まる。『……の、喉が渇いて』無理な言い訳だったかと思えばあっさり信じられた。馬鹿だな。枕元のテーブルにあった水差しから水を注ぐ。 『お姉さんも飲みます?』 「いらない。それより早くぅ」 『はいはい』 あー、気持ち悪い気持ち悪い。気持ちいい訳がない。下で喘いでいる女の顔を見ながらそう思った。俺の何が良くてこの女は指名をくれるのだろうか。 「はい、5枚」 『まいど。また呼んでね』 お得意の良い笑顔で手を振って先にホテルを出る。とりあえず、身体中に纏わりついた女の匂いが嫌で嫌で仕方なかった。 自販機で飲み物を買って近くのベンチで飲んでいたら携帯が光った。また誘いかと思って憂鬱にメールを開けば佐久間先輩からだった。 「今何してる」 たったの5文字。きっとあの人は俺が何をしているか知っているんだ。溜め息を吐きながら真っ暗な空を仰ぐ。目頭が熱くなって視界が歪む。微かな呻き声をあげながら携帯の光るパネルをそっと押す。 『会いたい』 自分でも驚いたが、多分本音だった。佐久間先輩からの返信が凄く怖くなる。ひかれたりしないかな。そればかりが頭を巡って、なんで送っちゃったんだろうと後悔する。 また携帯が光った。慌てて新着メールを開く。 |