06-2 「なんであんなことしたんだ。しかも、泣かせてまでっ」 「俺の気持ちをどうしても伝えたかったんだよ。今のままじゃ嫌だったから…」 先輩達が何か言ったり俺の名前を呼んだけど、俺は一心不乱にトイレに駆け込んだ。 なんで、なんで、なんでと何度も心の中で叫ぶ。 『なんで、なんでなんだよ…っ』 俺はバイだけど、でも、それは知らない人だから出来たことだ。幼なじみで兄貴分だった修二からのいきなりの告白は想像以上に頭を可笑しくさせた。想像なんかしてなかったけど。 ふと携帯が光った。見れば佐久間先輩からメールが届いていた。 「青汰、鬼道さんに許可を取ったから今日は帰っていいぞ」 涙の枯れた痕を拭って鞄を持ってトイレから出る。 生徒会室の扉を開けると全員が驚いた顔で俺を見た。修二の胸ぐらを掴んでいる佐久間先輩と、それを宥める鬼道会長と源田先輩と、全員俺を見て目を見開いた。 「青汰、帰っていいってメールしたはずじゃ…」 『いいんです、ちゃんと修二と話、したいから。生徒会も忙しいし』 そう言って修二について来いと促す。そのまま無言で屋上に向かった。屋上の屋根は丁度良く日陰になっていて、そこに腰掛ける。 「俺、ずっと青汰を見てたんだよ」 『…うん』 修二の顔を見れない。俯いたまま、ぽつりぽつりと話す修二の言葉に小さく頷くばかりだった。 「いきなりすぎて驚いた、よな」 『…うん』 「なんだか段々お前が離れて行ってしまう気がして怖かったんだ」 『…うん』 ふわりと香る修二の匂い。暖かい修二の温もりが嫌に胸を締め付けた。 「青汰、ごめんな…」 『…なんで修二が謝るんだよ』 「…ごめん……、好きだ…」 今にも泣きそうな掠れた声で囁いて、さっきより強く俺を抱き締めた。 背中に手を回して軽くさすると、修二の嗚咽が聞こえた。そのまま、ポンポンと小さい子供をあやすように背中を叩く。修二の小さな泣き声と「ごめん」の3文字が耳の中で木霊した。 Just a moment... |