06-1 「江村青汰!遅い!」 生徒会室の扉を開けると佐久間先輩が開口一番言った。『仕方ないじゃないっスか…、先生に使い頼まれたんスから』口を尖らせてそう言えば佐久間先輩のチョップが降ってきた。 「まあ、いいじゃないか佐久間。青汰だってわざとじゃないんだ」 「源田…、だが…」 『源田先輩〜っ』 源田先輩が助け舟を出してくれた。やっぱりこの人は格好良い。佐久間先輩が仕方なさそうに口を紡ぐ。 「もういいから、早く仕事しろ」 鬼道会長から冷ややかな喝がはいると、佐久間先輩は慌てた様子で自分のデスクに戻っていった。 あれ、会長いつもと違う…。 『あっ、眼鏡!』 「…どうした」 『会長眼鏡かけるんスね』 『眼鏡の会長も素敵です』と言うと会長は「そうか…」と一言言ってデスクの上にある書類に目を戻してしまった。 『俺、なんか気に障ること言いました…?』 なんだか様子が変だったからそう聞いたら会長はバッと顔を上げてまた首を横に大きくブンブンと振った。 『怒ってない…っスか…?』 「なんで俺が怒るんだ!むっ、むしろ逆だ!」 『ぎゃ…く?』 聞き直すと会長はハッとした顔をしてから、真っ赤になってデスクに突っ伏してしまった。とりあえず怒られたわけではないみたいだからホッと安堵の溜め息を吐く。 「俺の青汰ー!元気かぁぁぁあああ」 けたたましい音と共にまたアイツが来た。生徒会の皆さんもはぁ、と溜め息を吐いた。相当らしい。 『元気だし。昼に会っただろうが』 「いやいや、充電しに来た」 『はぁ?充電って何の…っ!』 いきなり目の前には修二の喉。額にさっきと同じ感触。昼間のもやもやはこれだったのかと悟る。 『なっ、しゅう…じっ』 「青汰が好きだよ」 『好きってお前…!』 「俺は本気だ」 目が真剣だった。初めて見る修二の姿に多少なりと戸惑う。間近の人に好きだなんて言われたことがなかったから。しかも幼なじみからだなんて考えてもなかった。 『俺、男だし…。つか、人前…っ!!』 ドンッと修二の胸を押す。周りを見れば、会長は突っ伏したままで、佐久間先輩と源田先輩は目を見開いていた。驚愕と羞恥で思わず涙が出た。急いで生徒会室を出てトイレに向かう。 |