俺を愛でよ! | ナノ


02-2


『よし、健也も手繋げ』
「なんだ、それ」


洞面のもう片方の手を繋ぐように促したはずが、健也は俺の左手を握った。


『あ、俺じゃなくて、洞面の…』
「いっ、いいじゃんか!たまには!」


『洞面の片手を握れよ』と言おうとしたら、健也が少し慌てた感じでそっぽを向いた。心なしか顔が赤い気がする。


『顔赤いぞ、健也。風邪気味か?』
「……なんでもねーよ」


ふと洞面を見れば、「ふーん」と呟きながらニヤニヤしていた。
それから体育館に着くまで健也は顔を真っ赤にしながらそっぽを向いたままで、洞面は健也の様子を見てニヤニヤしたままで、真ん中にいた俺は只気まずいだけだった。


「−−次は新入生歓迎の言葉。2年A組、咲山修二」


司会者は源田先輩だった。先生にも劣らないはっきりとした聞きやすい口調でスムーズに式を進めていった。
修二は台に上がると、口元にマスクを動かした。マイクのズル音と独特のノイズが耳に刺さる。すう、というブレスの音と共に修二は口を開いた。


「新入生の皆さん、並びに保護者の方々、ご入学誠におめでとうございます−−」


修二の歓迎の言葉は校長が話すような当たり障りない無難な内容だった。でも、さらっと左目にかかる髪と切れ長の流し目がなんとも言えない雰囲気を出していて、修二が校長なんじゃないかと空目してしまうくらいだった。


「−−続きまして、生徒会からです。生徒会長、鬼道有人」


ステージの右から出てきた生徒会長さまはそれはそれは不思議な格好をしていた。茶髪のドレッド、突き出たゴーグル、赤いマント。その奇妙な姿に体育館内がどよめき始める。


「みな、静粛に!俺がこの帝国学園生徒会の会長だ!ということは、この学園では俺がルール!」


鬼道会長は声高らかにそう言うと、胸に手を当てて、ばさりとマントを翻した。
そして高い台の上から前の方にいた俺らを指差して、こう言い放った。


「江村青汰。お前は、今日から生徒会会計だ!おめでとう」


理解するのに数分かかった。





Just a moment...

|→

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -