キョロキョロと小走りしながら周りを見渡す、私の大事なネタ帳を落としたことに気付いたのは本の数分前のことである。 「調子に乗って鞄振り回しちゃったのがいけなかったか…」 なんて数十分過去のことを悔やんでも仕方がない。 気付いたのは数分前、この辺りを通ったのが数十分前。 見つかるという希望と誰かが拾っているかもしれないという不安、だが私には確実に誰も拾っていないという自信があった。 「(この時間は大抵、私かサッカー部員しかいないし…大丈夫!)」 根拠のない自信が私をポジティブにしてくれたお陰か。 さっきよりかリズミカルな足音が廊下に響いた。 「あっれー…ないなぁ」 その言葉と同時に角を曲がる。 リズムが止まった。まるで休止符を打たれたような指揮者に演奏中止を指示されたような。 危険信号が鳴り響く。 私の目に映るのは今日で見慣れたハデな頭と私の大事な探し物。 なんとまぁ、ガッチリと見てるじゃないか中身を。 「…」 「…」 目が合った。 上手い言葉が見つからない私は固まったまま不動が持つ私のメモ帳へと視線をずらす。 「これ…お前の?」 口元を手で隠した状態で不動は言う。 目は私を映すことはなくて、白い壁に向けられていた。 さっき、私の表情には明らかに私のですという文字でも浮かんでいたんだろう。 焦ってしまっていたことは嫌でも自分で理解していた。 「…だったら、どうする?」 「ど、どうする…?」 こうなったら自棄だ。 いくらでも自爆してやるさっ! ふっと自嘲のように鼻で笑えば私は指を指して思いっきり言ってやった。 「それ私のだけど言いふらすか脅すか何かするのかって聞いてるのっ!」 あぁ、涙が出そうだ。 言い触らされるか脅されるか 中学生という幼稚な男子共はこのどちらかを選択するだろう。 「別に、なんもしねーよ。」 「へ?」 聞き返すときの英語を何といっただろうか、確かパから始まってンで終わったはずだ。 パルドゥン?いや、何かちがうな。 下らないことに頭を使えば、私の目の前にはネタ帳が差し出されていた。 「こんなの言いふらしたりして何になるんだよ。俺、女を脅す趣味ねーし。」 「(男を脅す趣味ならあるのか、成る程)」 「俺とか鬼道クンをネタにしてんのは少し引くけどよ…。」 「…すいません。」 「でも、まぁ…良いんじゃねぇの?」 そう言って不動はぎこちなく笑った。 ホントの笑顔か愛想笑いかは区別がつかない微妙な笑みだったけれど (少し派手めな貴方の変更ポイント) |